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青学の覇権を崩した東海の2年生たち。
二強対決、全日本&箱根の結末は?
posted2017/10/10 11:50
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
出雲駅伝の勝利。本当はうれしいはずだ。
それでも、東海大の両角速監督は満面の笑みをこぼすことはなかった。
「選手の力がうまく発揮された結果です」
と、謙遜する。それでも、監督の手腕が優勝を引き寄せたのは間違いなかった。
「区間配置がうまくいきました」
その言葉に、監督の充実感がうかがえた。
2016年に東海大に入学した現在の2年生には、高校長距離界の「顔役」がズラリと並んでいた。なにせ、全国高校駅伝の「花の1区」で上位を走った選手がごっそり入ってきたのだ。
そうなると、「いつ勝つのか?」が問われた。両角監督も、プレッシャーから無縁ではなかったはずだ。そしてついに2年目の秋、出雲で収穫は始まった。
出雲では、昨年度の三冠チーム、青山学院大との一騎打ち。両角監督は6区間のうち5区間で2年生を起用、監督の采配が冴えたのは1区と4区、そして最終6区だ。
スピード自慢の2年生が、力を存分に発揮。
1区には、前年度は駅伝を走った実績のない阪口竜平を指名。その阪口が区間賞を獲得し、青学大に38秒差をつけて優位に立った。
しかし、青学大は2区で田村和希、3区で下田裕太という経験豊富な4年生が好走。3区のつばぜり合いの中、青学大が東海大を逆転する。
それでも東海大には余裕があった。昨年度の3大駅伝すべてを走った鬼塚翔太を距離の短い4区に起用、軽快な走りで首位を奪還する。この段階で勝負はついていたように思う。
続く5区の3年生、三上嵩斗が手堅くつなぎ(彼の走りは敢闘賞に値する)、アンカーにはエースの關(せき)颯人を配していたのだから、両角監督のシナリオ通りの展開だったのではないか。
スピード自慢の2年生の力を、存分に発揮させての優勝だった。