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甲子園を沸かす、光のような強肩。
広陵・中村はなぜ投手をやらないか。

posted2017/08/21 17:00

 
甲子園を沸かす、光のような強肩。広陵・中村はなぜ投手をやらないか。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

清原超えの可能性がある本塁打が話題になりがちだが、肩も凄まじいの一言。ドラフト1位候補という評価もうなづける。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

 高校生の中に、メジャーリーガーがいるような――。

 そんな雰囲気さえある。

 今大会、強肩・強打で注目度ナンバーワンの選手となった広陵の捕手・中村奨成である。

 彼が二塁へ送球すると、それだけで球場が「うおおおおおお~」とどよめく。

 彼の指先から放たれたボールは、物理的にこんな軌道を描くことがあるのかと思えるほど、空中にきれいな直線を引く。そのまま、永遠に真っすぐ行ってしまいそうだ。

 かつて、イチローの外野からの返球をアメリカのメディアは「レーザービーム」と表現したが、連想されるのは、まさに光の軌道だ。

 これまで何人もの「強肩」と呼ばれる高校生の捕手を見てきた。だが中村の肩は、それらとはまったく異質だ。

 遠投は120メートルだという。数字だけで言えば、過去、そう申告していた選手は他にもいた。ただ中村の送球には、その数字だけでははかれない凄みがある。

「対戦したときも、送球が見えなかった」

 中村は中学時代、広島の「大野シニア」という軟式野球のクラブチームで捕手としてプレーしていた。現在はチームメイトの一塁手の大橋昇輝は、中学時代は同リーグに所属する別のチームでプレーしていたという。

「地域では中学時代から、中村の名前は知れ渡っていました。『化け物がいる』みたいな(笑)。マツダスタジアムでワンバンでスタンドに入れたことがあるって聞いてて、とんでもないバッターだなと。軟式ってぜんぜん飛ばないんで。実際に対戦したときも、(二塁までの)送球が見えなかった」

 投手のボールを速くて「見えない」ということはあっても、捕手のボールを「見えない」と表現するのを初めて聞いた。

 そんな逸話を聞けば聞くほど、素朴な疑問が湧く。

 歴代の指導者は、なぜ、中村に投手をやらせなかったのか――。

【次ページ】 なぜ投手じゃないのか聞いてみると……。

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