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呂比須新監督の“フライパン革命”。
新潟を4日間で変えた異例の手法。 

text by

大中祐二

大中祐二Yuji Onaka

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2017/05/26 07:30

呂比須新監督の“フライパン革命”。新潟を4日間で変えた異例の手法。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

ブラジルで何年にもわたって監督を務めていた呂比須ワグナー。彼がこんなにも“ソフトな監督”になると誰が予想しただろう。

「すばらしい! みんな拍手してください!」

 ハイプレスのための真ん中のボールから、左、右。2列目、つまり呂比須監督の言葉を借りればミディアムプレスの中、左、右、そしてロープレスの中、左、右。チームが一塊となって動く。トップから最終ラインまでは、35mのコンパクトさを保つことが求められた。

 続いて守備のときは4-2-3-1のトップ下が1列上がって4-4-2に、攻撃のときはボランチの1人がセンターバックの間に落ち、両サイドバックが上がる3-4-3の動きを確認する。3-4-3で実際にボールを動かしながらシュートまで行い、ゴールが決まれば「すばらしい! みんな拍手してください!」と手放しで褒める新監督。

 促されるままに、選手たちもみな拍手。「正直、拍子抜けしたというか(笑)」とは、あるベテラン選手の言葉だ。

「その2日前に、呂比須監督もあれだけレッズにボロボロにやられる姿を視察していたわけで。この状況を立て直すには、よほど危機感を持って、厳しくやっていかないとだめだろうと思っていたら、終わりの方に『あと3時間で終わりまーす』とか、冗談も交えながらの練習だったので(笑)」

前からボールを取りに行かない、という宣言。

 ただ和やかなだけではない。練習2日目、選手たちにきっぱり伝えた。

「オフサイドトラップはやりません。ボールを前から取りに行くこともしない」

 選手たちは戸惑った。前日、狭い局面で激しい1対1が自然に生まれるようなメニューが組まれ、選手たちも“久しぶりに新潟らしい、バチバチしたトレーニングができた”と充実感を味わった矢先のことである。アグレッシブにボールを奪いに行くのが自分たちの持ち味ではないのか。

「ボールを取りに行かないなんて。このサッカーをやるんだったら、俺はまったく必要ないです」

 開幕から試合に出続ける主力選手の1人は、戸惑いを通り越して、明らかに不満そうだった。

【次ページ】 中途半端に取りに行ってのカウンターにまず対処。

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呂比須ワグナー
アルビレックス新潟

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