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桐生祥秀は五輪なら1本目で失格!?
フライングは想像以上に重いのだ。
posted2017/05/21 07:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
AFLO
日本人3選手が出場した上海ダイヤモンドリーグの100m。桐生祥秀選手はフライングで失格、標準記録を狙ったケンブリッジ飛鳥選手は10秒19で4位、サニブラウン・アブデルハキーム選手は10秒22で5位。桐生は自身がフライングをとられたことに驚きの表情をみせ、2度のフライングの影響もあったのか、記録が伸び悩んだケンブリッジとサニブラウンはすっきりしない表情でそれぞれレースの感想を口にしていた。
ダイヤモンドリーグを含めて、世界陸上、五輪などで日本選手がフライングをするのはとても稀で、筆者自身、記憶にない。また桐生選手が失格となった2度目のスタートは、肉眼ではどんぴしゃりで飛び出したようにも見えたため(実際は反応時間が0.084。0.100以下がフライングとされる)、集まった報道陣も状況を理解、納得するのに時間がかかった。
桐生に同情的な意見もあるが……。
日本では桐生選手のフライング失格に同情的だったり、擁護する意見も見られた。「走るのが見たかった」という感情が先行した部分もあるかもしれない。
しかし海外コーチや代理人の分析は、そういった意見とは一線と画す。
1回目のフライングをしたアイゼア・ヤングを指導するデニス・ミチェルはヤングに怒り心頭で、「普段から『音を聞いてから出ろ』と言っているのに、あんなミスをするなんて信じられない」と話す。ヤングは「精神的なミス。どんな状況でもルールはルール。しっかり走れなかった自分が悪い」としょんぼりした表情だった。
ヤングの所属するチームではスタート練習でフライングをした場合、「腕立て伏せ50回」を行うルールがあるという。
練習でフライングをした場合、罰ルールがあるチームは多い。腕立て伏せは定番メニューで、練習後に400mを課すチームもある。コーチは「体で覚えさせるためにはこれくらいの罰が必要。実際のレースでフライングしたら、もっとつらいからね」と話す。
また別のチームでは「遅め、普通、早め」の3バージョンのスタート練習をしていた場面も見たことがある。「セット」からの間が長く、こらえきれずに飛び出した選手は「遅い!」と文句を言っていたが、コーチ曰く、「どんな状況でも確実にスタートする練習だから」と笑いながら話していた。