プレミアリーグの時間BACK NUMBER
レスターはラニエリのクビを切るか。
降格危機で試されるクラブの品格。
posted2017/02/11 11:30
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Getty Images
さすがは世界を魅了した「シンデレラ」。
降格候補として迎えた昨季を、プレミアリーグ王者として終えたレスターのことだ。何がさすがなのかと言うと、2月5日の24節で降格圏までの距離が1ポイントに縮まった後の世間の反応。国内ではクラブの垣根を越えて「レスターが落ちてしまう」と心配されている。
筆者の周りでも、記者仲間ではイングランド人のチェルシー番からフィンランド人のプレミア担当まで、隣人ではトッテナム・ファンの建築家から、サッカーファンというわけでもないグラフィックデザイナーまで、今季レスターの行く末を案じている。
リーグでの成績は、24節を終えて僅か5勝。後半戦は勝ち星も得点もないまま、マンチェスター・ユナイテッドに敗れて4連敗となった。普通なら、サポーター以外の間では「落ちそうだな」という冷めた反応が見られる程度だろう。たとえば今季は降格候補の一員であるサンダーランドについては、10月の時点で「もはや落ちたも同然だ」として見捨てる声さえ聞かれた。
誰もがレスターを、ラニエリを応援している。
しかし、レスターは違う。降格が現実味を増す中で、人々は放っておけずにいる。
「シンデレラストーリー」の名作を指揮したクラウディオ・ラニエリが解雇のプレッシャーを受けると、識者の間で「とんでもない」という意見が相次いだ。
ラニエリ自身に言わせれば「洋上で鮫に囲まれている」状態だ。ブックメーカーのプレミア監督解任予想では、次なる犠牲者の筆頭格。ソーシャルメディアでは「限界」や「潮時」といった言葉を使う者が増え、メディアでは選手の心離れを示唆する報道まで行われるようになっていた。
するとマンU戦のテレビ解説スタジオで、ジェイミー・キャラガーが「嘆かわしい」とラニエリへの支持を表明し、ギャリー・ネビルも「正気を疑いたくなる」と同調。リバプールとマンUのOBが、ラニエリ援護に声を揃えた。続くFAカップではダービーのスティーブ・マクラーレン監督が、「(ラニエリは)レスターが銅像を建てて功績を祝うべき監督だ」とも言っている。
筆者も、今季中のラニエリ解雇は見たくない。現実になれば、好人物としても知られるベテラン監督に対して酷すぎるという以上に、サッカー界の出来事として寂しすぎる。