野球のぼせもんBACK NUMBER
なぜ阪神は彼に66番を用意したか。
SB戦力外の柳瀬明宏と斉藤和巳の縁。
posted2016/12/08 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Hideki Sugiyama
来季から阪神タイガースの背番号66。
柳瀬明宏はやや恐縮気味に、その舞台裏について明かしてくれた。
「周りからは『背番号は自分で希望したの?』とよく訊かれますが、そんなはずない。だってホークスを戦力外になって拾ってもらった身です。契約の席で球団から提示されたのが『66番』だった。タイガースが僕の事情をどこまで把握しているのかなんて、その場では聞けなかったし、配慮をしてもらえる立場でもないですよ」
ただ、再起を誓うのにこれ以上力を与えてくれる背番号はないはずだ。
これまでの野球人生だって、66と書かれたあの大きな背中に、何度救われただろうか。
「ホークスを離れることになるけど、ここまで11年間もやってこられたのは(斉藤)和巳さんのおかげだと思っています。あの人がいなければ、今の僕はなかった」
ホークスからクビを通告されたのは、2度目だった。
中継ぎ一筋で一軍実績は通算216試合。ただ、その数字以上に中身の濃いピッチングを見せてきた。
特にストレートは魅力的で、表現するならば、打者が分かっていても当たらない凄まじい伸びがあった。全盛期の藤川球児に近かった印象だ。さらにフォークもよく落ちた。
'12年には35試合、'13年には44試合に登板して、2年連続で防御率1点台という成績を残している。
だが、とにかく怪我が多い選手だった。
じつは、ホークスからクビを通告されたのも、今回が2度目だった。