炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ躍進を二軍で見つめて――。
もがく大瀬良、堂林、野間の現在地。
posted2016/08/21 07:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
Hideki Sugiyama
彼らの目に、カープの快進撃はどのように映っているのだろう。
一昨季は10勝で新人王を獲得し、昨季は急きょセットアッパーを務めた大瀬良大地は、右肘痛で開幕を3軍で迎えた。'14年に全試合出場した堂林翔太は一軍と二軍を行ったり来たり、輝きを取り戻せないでいる。昨季は新人ながらシーズン通して一軍に定着した野間峻祥はいまだスタメン出場がない。
25年ぶりの優勝へ突き進む充実のシーズンの中、広島の未来を託された期待の選手たちはもがいている。
大瀬良は8月12日、中継ぎというポジションで一軍に帰ってきた。今季は前田健太が抜け、先発の大黒柱と期待された中で、春季キャンプ中に右ひじを痛めてしまう。「右肘内側側副靱帯損傷」との診断を受け、長期離脱となっただけに悔しさは募った。
その当時、取材陣には「しょうがないと思うしかない。より強くなって一軍に戻りたい」と前向きな言葉を紡いだが、内心は違っていた。同時期にリハビリに励んだ鈴木誠也は「あのときの大瀬良さんは本当に落ち込んでいた」と振り返る。ともに大きな期待を背負った者同士ということもあって、食事をともにしながら励まし合った。
287日ぶりの一軍マウンドは3回4失点と炎上した。
長いリハビリを経て、7月20日の中日戦で287日ぶりに一軍マウンドに上がった。緒方孝市監督から後半戦のキーマンに挙げられる期待を背負ったが、最速は142キロしか出ず、制球にも苦しみ、3回まで毎回の7安打4失点。何もできないままマウンドを降りた。
「真っすぐに強さがなかった。思うような球を投げられなかった。もっと、もっと良くなって戻ってきたい」
試合後、報道陣の質問に答える表情には、まだ不安がぬぐい切れていなかった。登板翌日、再び選手登録を抹消された。
あれから復調の兆しをつかむべく模索を続けた。なかなか思うように投げられないジレンマを感じる中、8月9日ウエスタン・リーグのオリックス戦では先発ではなく、中継ぎでの登板となった。4点リードの7回に2番手としてマウンドに上がり、最速は147キロを計測。わずか9球で3者凡退に切った。佐々岡真司投手コーチは「きっかけ作りもある。腕を振るだけでなく、打者が打ちづらい投球(をつかむ)というのもある」と先発調整の一環であることにも含みを持たせた。