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放映権料が上がった背景と使い道。
コンサルがJリーグの分配を考える。 

text by

並木裕太

並木裕太Yuta Namiki

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/08/09 07:00

放映権料が上がった背景と使い道。コンサルがJリーグの分配を考える。<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

現在J1の首位を走る川崎フロンターレ。彼らのような攻撃的なチームが上位にいることは、リーグにとっても重要かもしれない。

DAZNがJリーグを選んだ、積極的、消極的な理由。

 たとえばアメリカの4大スポーツは、ESPNやCBSといった大手放送局が非常に高額な放映権料を各リーグに支払っており、放送局に別れを告げてネット中継のDAZNに移行するというのは、少なくとも今の段階では非現実的と言わざるをえません。欧州サッカーも、競合が多く、放映権はすでに高騰しています。スポーツ視聴文化の成熟した国で、放映権を手に入れ、放送から通信へとシフトさせていく作業は、リーグと放送局の関係性や資金面などの理由により、決して容易ではないのです。

 さらにパフォームが事業を展開していくうえでは、その市場が整備された通信網を有していることも重要な条件になります。

 通信網の発達した経済大国・日本にあって、「スカパー!」との契約最終年を迎えるJリーグは、パフォームが自社の革新性をアピールしつつ成功例をつくりあげ、今後のグローバルな事業拡大への第一歩を刻む市場としてうってつけだったのではないでしょうか。

 また今回の放映権交渉に(報道が事実とすれば)ソフトバンクが加わったことも、パフォームの提示金額に影響を与えたはずです。バスケットボール男子「Bリーグ」にネット放映権込みのスポンサー契約で4年総額120億円(推定)を支払うというソフトバンクの“金銭感覚”を見せつけられたパフォームは、Jリーグの価値算定をやり直すことになった、かもしれません。

地上波やBSはこれまで以上に制限される可能性。

 今回の契約により、来季以降のJリーグ中継の視聴方法はインターネットを介したDAZNが中心となります。ただ試合数は限定的ながら、別個の契約に基づいて地上波やBSで放送される試合はあるはずですし、パフォームがサブライセンスを与えることによって、「スカパー!」でも視聴できる可能性は十分にあります。しかし、それはあくまでパフォームの判断次第であり、DAZNの浸透を図りたいパフォームとしては、「放送」を介した中継試合数に一定の制限をかけるであろうこともまた予想されます。

 そして本質的な問題は、今回の放映権契約によって大幅な増収を約束されたJリーグが、その資金をどう活用するかです。

【次ページ】 リーグ戦で上位に入ったクラブに手厚い分配も?

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