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フロンターレがNASAと交渉する理由。
川崎市と作り上げる本当の地域密着。

posted2016/08/12 08:00

 
フロンターレがNASAと交渉する理由。川崎市と作り上げる本当の地域密着。<Number Web> photograph by Masahiko Tejima

砂田(左)はフロンターレのJ2時代を知る筋金入りのサポーター。家族3人で年間シートを購入しており、今シーズンは福岡、新潟とアウェーゲームの応援にも駆け付けた。(右は天野)

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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Masahiko Tejima

 川崎フロンターレが仕掛けるイベントは、どうしてこんなにぶっ飛んでいるのか。

 8月16日には宇宙飛行士とのリアルタイム交信企画が、いよいよ実現する。ホームスタジアムの等々力陸上競技場と国際宇宙ステーションを衛星回線で結び、中村憲剛や川崎市内の小学生が、大西卓哉宇宙飛行士と会話をするのだ。スタジアムを宇宙空間とつなぐ生交信企画は、日本はおろか世界でも前例がない。

「え、ホントにできるの? というのが最初の反応ですよ」

 川崎市の副市長という立場で今回の企画に関わった砂田慎治は、そう振り返る。生交信の成功を祈っている市の関係者は、砂田だけではない。川崎市の職員すべてと表現しても大袈裟ではないだろう。

 読者の皆さんには、疑問が2つあるのではないか。(1)民間のスポーツクラブが準備を進めてきたイベントの成否に、自治体が大きな関心を寄せる理由はどこにあるのか。(2)そもそも、サッカークラブがどうして宇宙にまつわるイベントを?

NASAと交渉し、前人未到の「宇宙」イベントを。

 川崎フロンターレのプロモーション部長として、斬新なイベントや企画を数え切れないほど手掛けてきた天野春果には、ひとつの確信がある。

「話題性が高いほど、より多くの人に興味を持ってもらえますからね」

 サッカークラブがどうして、という驚きをむしろ逆手に取り、企画が発するインパクトを突き詰めた結果として、前人未踏の「宇宙」に辿り着いたのだ。話題性のためなら、天野はなりふり構わず突き進む。今回の生交信には、NASAとの交渉が不可欠だった。

 ……NASAって、あのNASA? その通り。アメリカ合衆国の航空宇宙局、すなわち政府機関だ。交渉の難易度がどれだけ高かったか、誰もが想像できるだろう。

 仕掛け人・天野の強いこだわりは話題性だけではない。同様に意識しているのは、イベントの地域性と社会性だ。

「この3つが揃わないと、ただ楽しいだけのイベントで終わってしまいます。地域に根差した市民クラブのフロンターレがやるからには、地域の発展につなげたいし、地域への愛着を育んでもらいたい。だからなんですよ。フロンターレのイベントや企画に川崎市を巻き込んで、社会性を持たせてきたのは。市民を豊かに、まちを元気にというベクトルがフロンターレと同じですからね」

【次ページ】 川崎の平均観客動員は、2001年から伸び続けていた。

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