球体とリズムBACK NUMBER
ビルモッツ、コンテの両監督に注目!
EUROでのベルギー、イタリアの実態。
posted2016/06/25 11:30
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
今回は諸事情があって、フランスには行かないことにした。EUROを日本で観るのは、エドガー・ダービッツの巨大な壁画の映像がやけに記憶に残っている2000年以来のこと。これまではできるだけ現場を踏もうとしてきたけれど、年齢を重ねて責任が生じるようになると、自分の望みどおりにいかないことも増える。だからひとり夜な夜なテレビを観て仕事をしているわけだが、実はこの状況が大会を俯瞰するには適しているのかもしれないと思えたりもする。
欧州連盟の公式サイトで働いていた頃の2008年大会は、バーゼルのホテルをベースに様々な国の同僚と仕事をしながら、ちょくちょく試合会場にも行ったが、移動と執筆で忙しすぎてフットボールそのものの印象は意外と薄かった。
スペイン黄金時代の幕開けを告げるフェルナンド・トーレスのゴールも素敵だったけど、16年前にテレビの画面で見たダビド・トレゼゲの極めて美しいゴールデンゴールの方が鮮明に思い出せるように。
もちろん、開催地に行けたらよかったとは思う。でも「今できることにベストを尽くす」というのが僕のモットーなので、今大会についてもきちんと語っていきたい。まずは気になる2人の指揮官から。
スター選手が集まるベルギーの弱点は監督!?
「退屈な監督の指導により、黄金世代が台無しになるリスク」
グループステージで最も衝撃的な結果に終わった試合のひとつ、ベルギー対イタリア戦の数日後、『ガーディアン』紙の電子版に刺激的な見出しを見つけた。
戦術解説に定評のあるその書き手によると、ベルギーのマルク・ビルモッツ監督はトレーニングで選手たちに明確な指示を与えず、攻撃の形を示すこともほとんどないという。そのため、ベンチにまでスター選手がそろうチームは鋭さを欠き、史上最も地味に見えるアズーリに敗れてしまった、と。
エデン・アザールやケビン・デブライネを筆頭に、複数のビッグタレントを抱えるチームは開幕前、今大会の優勝候補にも数えられていた。ただし国内では、指揮官の力量を不安視する声が上がっていたのも事実だ。