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西川周作はPKを志願する男である。
「迷ったら、前へ。それが自分」

posted2016/05/26 17:00

 
西川周作はPKを志願する男である。「迷ったら、前へ。それが自分」<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

西川周作は志願してPKキッカーとなり、そして敗れた。しかしその決断を非難する資格は誰にもない。

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轡田哲朗

轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada

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 全てを背負う覚悟を決めたからこそ、一歩を踏み出せる。

 浦和レッズのGK西川周作は、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16第2戦のFCソウル戦がPK戦にもつれ込んだ時、自らキッカーに名乗りを上げた。

 延長後半がタイムアップを迎えたことを告げるホイッスルが鳴り響き、浦和はベンチの前でPK戦のキッカーを決めるミーティングを行った。選手たちの自主性を重んじることで成長を促してきたミハイロ・ペトロヴィッチ監督らしく、コーチングスタッフから打診を行った選手もいたものの、基本的にはキッカーはまず志願する選手を募った。その結果、3人まではスムーズに決まった。しかし、その後が続かなかったのだという。

 120分間、それも死闘と呼べるようなタフなゲームをフル出場した選手に、ここで手を挙げるべきだと外から言うのは身勝手だろう。第1戦も合わせれば、210分を戦ってきた全ての結果が集約されるPK戦のキッカーに志願するのは、簡単な決断ではない。まして、自分のフィジカルコンディションやメンタルに少しでも不安があれば、そこで名乗り出ないという決断に至ったとしても、責めることはできない。

 それでも、西川は「僕は4人目でも5人目でも大丈夫だ」と名乗りを上げた。

決めれば勝利のキックを、西川は外した。

 フィールドプレーヤーの中に入っても見劣りしないキックの能力を考えれば、体力的にも余裕がある西川がキッカーを務めることに、なんら疑問はない。

 ただし、GKがPK戦のキッカーを務めること、それも5人目のキッカーになることは、チームの勝敗全ての責任を背負うことを意味する。西川がペナルティースポットに向かった瞬間に、何よりもその精神的な強さ、恐怖感に負けずに一歩を踏み出す強さに驚かざるを得なかった。

 しかし、残念ながら結果は悪い方に転がった。先攻の5人目に登場した西川は、決めれば勝利が確定するキックを「理想はもう少し上だったけど、軸足がしっかり踏み込めずに高さが出なかった」と、相手GKにセーブされてしまい、勝利を確定させることができなかった。

 PK戦は最終的に8人目までもつれ、接戦の末に浦和は敗れた。GKとしての西川も、枠外に外れた相手の3人目以外、1本も止めることはできなかった。それでも、自分の決断を悔いることなく、正面からその現実を受け止めた。

【次ページ】 「悔いはないのだけど、もう少し仕事をしたかった」

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