沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
馬の力を溜める池添謙一のスタート。
シンハライトの「爆発的な数完歩」。
posted2016/05/23 11:15
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
第77回オークス(5月22日、東京芝2400m、3歳牝馬GI)を、1番人気のシンハライト(父ディープインパクト、栗東・石坂正厩舎)が制し、2センチの鼻差に泣いた桜花賞の悔しさを晴らした。
鞍上の池添謙一の、シンハライトに対する強い信頼が伝わってくる騎乗だった。
掛からないよう、そっとスタートしたからか、ゲートからの数完歩はそれほど速くなかった。道中は、先頭から10馬身以上離れた後方に待機。そこから無理にポジションを上げようとしなかったのは、シンハライトのリズムを守って直線に向きさえすれば差し切れる、と信じていたからだろう。
ラスト200m地点で外に斜行し、他馬の走行を妨害したのはいただけないが、騎乗馬のエネルギーの溜め方は、さすがにそれまで牝馬でGIを9勝していただけある。
シンハライトは、前がひらけるや鋭く伸び、ラスト3ハロン33秒5の末脚で、3歳牝馬の頂点に登り詰めた。勝ちタイムは2分25秒0。
スタートの温存が、直線の爆発的な数完歩に。
大外から突っ込んできた戸崎圭太のチェッキーノも同じ33秒5の脚を使ったが、首差及ばぬ2着だった。ラスト100mほどのところでシンハライトに並びかけ、そのまま突き抜けるかに見えた。しかし、並んでからの数完歩で勝ち馬にグイッと前に出られ、そこでつけられた僅かな差が、決定的な差になってしまった。最後は詰め寄ったのだが、逆転には至らなかった。
シンハライトが抜け出すとき、爆発的な数完歩を繰り出すことができたのは、ゲートからの数完歩で無理をしなかったから、いや、池添が無理をさせなかったからだろう。勝負どころから直線半ばまで前が塞がっていたことも、最後に噴出させる力を溜めるうえでプラスに作用したようだ。
池添にとって、2008年のトールポピー以来となるオークス2勝目。この春、GIで2着3回、3着1回と惜敗がつづいていたが、デビュー前から騎乗していたシンハライトとともに、栄冠を手にすることができた。
ただ、繰り返しになるが、直線での斜行が後味の悪さを残したことは残念だ。この走行妨害により、池添は、5月28日から29日まで2日間の騎乗停止処分となった。トールポピーで勝ったとき(降着ルールは現在と違っていたが)も同様に、着順に変更はなかったが、走行妨害で騎乗停止になった。本人が一番わかっているだろうが、舞台が大きくなればなるほど、綺麗な競馬をファンに見せることが大切になってくる。3度目が起きないことを望みたい。