マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
東大・宮台康平は本当に一流なのか。
“勉強と両立させた野球”の副作用も。
posted2016/04/27 10:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Takuya Sugiyama
筆者の高校野球部の1年先輩に、ある“東大野球部OB”がいる。
時は、法政大に怪物・江川卓投手の君臨する1970年代後半。東京六大学、何度目かの黄金時代といわれた時代だ。
東大入学の翌年、2年生からリーグ戦のベンチに入ると、3年生の秋からの3シーズンは主に「2番・ライト」でレギュラーをつとめ、通算22安打をマーク。法政大・江川卓との対決は1試合だけだったが、立ち向かった4打席で「一度も三振しなかった」のが、氏の矜持となっているという。
今も多忙な毎日を送る中、時間を作っては神宮に足を運ぶ。
「自分の学生時代、卒業してからもう40年以上東大の試合を見てるけど、間違いなくその中にはいなかったピッチャーだな。先輩たちの中には、プロで9勝した新治(伸治、小石川高→東大→大洋ホエールズ)さんみたいな人もいるけど、歴代でも3指に入るピッチャーかもしれない。今の六大学の左腕なら早稲田の大竹(耕太郎)もいいピッチャーだけど、素質や将来性を含めたら、リーグNo.1左腕って言っていいんじゃないかな」
こうはなしてくれたのは、この「NumberWeb」を運営する文藝春秋の取締役・古田維氏だ。
体が開かないので、数字以上に速く見える。
還暦を過ぎた今でも、同社の野球チームでは不動のエースとして君臨し、学生時代から欠かさず続けている腕立て伏せの通算回数は、すでに10万回をはるかに超えている“鉄人シニア”である。“後輩”宮台についてこう語る。
「後ろ(テークバック)が小さくて、踏み込んで一気に体の左右を切り返す。ああいうフォームのピッチャーだと、バッターはボールが見えないんだよね。正確に言うと、途中から突然ボールが見えてくる感じ。ガンの数字は140キロ前後だけど、バッターはもっともっと速く感じてるはず。プロでいえば、和田(毅、ソフトバンク)だな。実際、早稲田のバッターが、上位打線でもボール2つも3つも差し込まれてたからね。お手上げのボールだったな」