欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
戦術は一体どこまで進化するのか?
バイエルンとユーベの「4つの布陣」。
posted2016/03/17 18:10
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
AFLO
攻撃という意味でも、守備という意味でも、サッカーの教科書に記録すべき、とてつもなく戦術的にハイレベルなゲームだった。
CL決勝トーナメント1回戦第2レグ、バイエルン対ユベントスは、バイエルンが前半に0-2とリードされながらも、後半28分と後半46分のゴールで同点に追いつき、さらに延長で2点を決め、4-2でベスト8への切符を手に入れた。ペップ最終年、「トリプル」(三冠)の夢はまだ終わらなかった。
この試合においてまず注目すべきは、ユーベのアッレグリ監督が用意した「2つの守備システム」だ。バイエルンがGKノイアーを中心にビルドアップするときは「4-1-3-2」、バイエルンがユーベ陣内に入ってきたときには「5-4-1」になるという可変布陣である。対ペップの守備戦術として、もしかしたら最高傑作かもしれない。
すべてが融合したユーベの最高のハイプレス。
1つ目の「4-1-3-2」は、いわゆるハイプレス用の布陣だ。
【FW】ポグバ、モラタ
【MF】A・サンドロ、ケディラ、クアドラド
【MF】エルナネス
【DF】エブラ、ボヌッチ、バルザーリ、リヒトシュタイナー
【GK】ブッフォン
2トップのモラタとポグバがGKノイアー、CB(センターバック)のキミッヒとベナティアに圧力をかけ、ケディラがアンカーのシャビ・アロンソを激しくチェックする。そしてA・サンドロが右サイドバックのラーム、クアドラドが左サイドバックのアラバの監視役になる。この計5人が労を惜しまない狩猟犬となって、バイエルンを追い詰めた。
彼らがすごいのは、単純にボールに喰らいつくのではなく、必ず1人で2つのパスコースを消すポジションを取ることだ。パスコースに相手の足が伸びてくると思うだけで、バイエルンの選手はそこにパスを出せなくなる。闇雲に突っ込むとかわされやすいが、各自がこういう「ゾーンディフェンスの基礎」を実行できると、プレスの網が強固になる。身体能力、個人戦術、集団戦術のすべてが融合した最高のハイプレスだった。