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戦術は一体どこまで進化するのか?
バイエルンとユーベの「4つの布陣」。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2016/03/17 18:10

戦術は一体どこまで進化するのか?バイエルンとユーベの「4つの布陣」。<Number Web> photograph by AFLO

決勝点となった右足ゴールを決めたチアゴ・アルカンタラ。バルセロナ時代からグアルディオラに重用されてきた男の一撃だった。

コンパクトではなくても機能する布陣が存在する。

 興味深いのは、前方の5人がボール狩りをしている最中、後方の5人のフィールドプレイヤーはマンマークによってカウンターをケアしていることだ。ボヌッチとバルザーリがFWレバンドフスキ、リヒトシュタイナーが左FWリベリー、エブラが右FWD・コスタ、エルナネスがMFミュラーを厳格にマークする。前方が「リスクを負う攻撃的守備」をする一方で、後方は「リスク管理」をしているということだ。ビダルだけがフリーになるが、ユーベはこれを許容していた。

 前方の5人と後方の5人の間にはスペースが広がり、コンパクトな陣形ではないのだが、2つの集団がそれぞれ異なる役割を担うことで、バイエルンの攻撃のリズムをかき乱した。

バイエルンを「いつもと違う状況」に持ち込むために。

 2つ目の「5-4-1」は、完全にブロックを組む守備だ。

【FW】モラタ
【MF】ポグバ、エルナネス、ケディラ、グアルダード
【DF】A・サンドロ、エブラ、ボヌッチ、バルザーリ、リヒトシュタイナー
【GK】ブッフォン

 ペナルティボックス付近にも、サイドにも、人を密集させて城壁を築く。一人ひとりのシュートブロックの技術が高いため、ミドルシュートも簡単には枠に飛ばさせない。

 とにかくバイエルンとして誤算だったのは、思い通りにビルドアップできなかったことだ。かつてオランダの名将フース・ヒディンクにインタビューしたとき、「最も戦術で有効なのは、相手がいつもやっていない状況に持ち込むことだ」と教えてくれた。

 まさにこの日はバイエルンにとっていつもの状況ではなかった。ペップを含めて、パニックに陥ったに違いない。

 ペップにとって前半に悔やまれるのは、守備を意識したメンバーを先発させたことだろう。第1レグでは本職ではないアラバとキミッヒにCBを組ませ、さらにビダルをアンカーに置くという大胆なメンバーを選んだ。攻撃時には彼らが3バックを形成するという「0バック」である。これが的中し、第1レグではショートパスでユーベを圧倒して2点のリードを奪った。

【次ページ】 2点をリードされ、ペップは再び0バックを実行する。

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