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打っても打っても入らないシュート……。
コービー・ブライアント引退、心の内。

posted2015/12/04 18:20

 
打っても打っても入らないシュート……。コービー・ブライアント引退、心の内。<Number Web> photograph by Getty Images

引退宣言は記者会見ではなくツイッターで発表され、デレク・ジーターらと共に運営しているネットメディアに掲載された。

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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 スーパースターの引退は、それがどんな形であっても、人々の心を揺さぶる。全盛期に辞意を表明すれば「まだできるのに」「もっと続けてほしい」と乞われ、衰えがわかるまでプレーし続けると「いい思い出のままで終わらせてほしかった」と嘆かれる。ファンとは身勝手なものなのだ。

 もっとも、身勝手なのはスーパースターも同じだ。誰から何を言われようと、自分のやり方を貫く。それぐらい強い意志の持ち主だからこそ、頂点にまで上り詰めてきたのだろう。

 コービー・ブライアントにとってのやり方も、最後まで勝手で、そして泥臭かった。

ここ数年、自分のプレーができなかった。

 今シーズンのブライアントのプレーは、正直言って、時に見ていられないほど酷い。

 2年半前にアキレス腱を断裂してから故障続きで、昨季も、その前のシーズンも、故障によってシーズン途中で離脱している。今季は万全な体調で開幕を迎えたはずだったのだが、コート上では思うようなプレーができていない。以前と同じ感覚でプレーしているのだろうが、ボールが手につかず、脚力が気持ちに応えることができず、どこかズレが生じていた。若い頃なら、それでも強引に自分のプレーに持っていけたのかもしれないが、20シーズンもの間、1500を超える試合を戦った身体には、そこまでの余裕がない。

 特に顕著なのはシュートだ。

 打っても、打っても入らない。

 1試合に何本ものシュートがリングにも届かずに落ちていく。自分でも理由がわからないまま、それでも彼らしく、次は入ると信じて打ち続けている。NBAに入って最初のプレイオフで、18歳の彼が、勝負のかかった場面でエアボールを連発しても打ち続けたように。

 そんな状態だったので、11月29日、ブライアントが正式に引退を発表したことに驚きはなかった。開幕前から、今シーズンが最後になりそうだというコメントを繰り返していたし、その気持ちを覆すだけのプレーをコートでできていないのは、本人も周囲もわかっていた。

引退宣言を、詩のスタイルで発表した。

 発表のしかたは、ブライアントらしかった。彼自身も出資している「The Players’Tribune」のメディアサイトに、“Dear Basketball”と題した、愛するバスケットボールに向けた手紙の形をとった詩を掲載。

「取りつかれたように君を愛することができるのは、あと少しだけだ。今シーズンいっぱいだ」「僕の心は痛めつけられても大丈夫だ。僕の頭はまだ耐えられる。でも、僕の身体は別れを告げる時だと知っている」といった表現で、今季限りの引退を表明した。

 その日の夜、ホームコートのステープルズセンターで行われたインディアナ・ペイサーズとの試合後に、ブライアントはあらためて引退の決意に至った気持ちを語った。

 その会見の中で印象的だった言葉がいくつかあった。

【次ページ】 自分のプレーを「クソったれ」と認めたこと。

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