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打っても打っても入らないシュート……。
コービー・ブライアント引退、心の内。 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2015/12/04 18:20

引退宣言は記者会見ではなくツイッターで発表され、デレク・ジーターらと共に運営しているネットメディアに掲載された。

引退宣言は記者会見ではなくツイッターで発表され、デレク・ジーターらと共に運営しているネットメディアに掲載された。

「そうだ、コービー! 打ち続けろよ!」

 会見の前に行われたペイサーズ戦では、引退の決意を知ったファンが、そんなブライアントの泥臭い努力を後押ししていた。試合開始から、ブライアントはシュートを打っては外し、リングまで届かないエアボールも放ち、連続で6本のシュートを外した。その時、スタンドの1人のファンが叫んだ。

「そうだ、コービー! 打ち続けろよ!」

 その声に応えるかのように、ブライアントは7本目でステップインからのレイアップを決めた。数年前なら、パラパラと拍手が起こるくらいの、決めて当たり前のシュートだったが、会場を埋めた18,996人のファンが大喝采で喜びを表現した。

 序盤から大差をつけられた試合だったが、レイカーズは最後まで粘りを見せた。

 残り15秒を切って4点ビハインド。スローインされたボールは、真っすぐトップ位置のブライアントに渡り、ゴールを向いたブライアントは躊躇なく3Pを放った。以前の彼なら何度も決めていた状況だが、この試合では、それまで3Pを5本放ってすべて外していた。ましてや、足に力が入らなくなる試合終盤だ。

 しかし、奇跡が起きた。

 ブライアントが放ったボールは、以前のように、まっすぐリングに吸いこまれたのだ。会場が歓喜の声で満ち溢れた。

自分の物語で一番面白いことは何かと聞かれて……。

 しかし、この日は完璧なハッピーエンディングにはならなかった。その直後、3点ビハインドからブライアントが放った3Pは、今度は大きくずれてエアボール。レイカーズはシーズン14敗目を喫した。喜びの後の落胆。それでも、落胆できるということは、勝利にそれだけ近づいたことの証でもある。

 引退後には物語を伝える側になりたいと言うブライアント。会見で、自分の物語で一番面白いことは何かと聞かれると、こう答えた。

「手にできなかった優勝。そこにたどり着くまでの苦労。そういったことがあって、旅が完全なものになる。チャンピオンだけだったら、敵がいないことになる。いい時も悪いときもあって、うまくいかない時があって、だからこそ、映画の最後が面白くなる。そういった瞬間を心から楽しんでいる」

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