サムライブルーの原材料BACK NUMBER
宇佐美貴史を成長させる2人の監督。
“お子ちゃま”発言から4日後の意地。
posted2015/10/13 10:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
長谷川健太監督も、きっと目を細めたはずである。
オマーン・マスカットで行なわれたロシアW杯アジア2次予選のシリア戦。1-0で迎えた後半21分、宇佐美貴史は交代の一番手としてピッチに入っていった。
その直後だった。日本のCKからカウンターを受け、敵陣からスピードに乗ったドリブルで攻め上がってくる相手に対して宇佐美がピッタリとマークしていく。最後はスライディングで、ボールをタッチラインの外に追いやった。
途中出場のフレッシュな選手がやるべき当然のプレーとはいえ、宇佐美の投入によって日本はもう一段階、ギアが入った感じがした。
いい守備は、いい攻撃につながっていく。
宇佐美は香川真司への浮き球のパスで2点目を引き出し、3点目は本田圭佑のラストパスを受けて自ら落ち着いて決めた。疲労の色を見せながらもあきらめないシリアに反撃を許さなかったのは、宇佐美の働きが大きかった。
4日前、宇佐美に向けられた“お子ちゃま”発言。
筆者は日本で試合の映像を眺めながら、4日前のことを思い出さずにはいられなかった。
10月4日、等々力競技場。
ガンバ大阪は、川崎フロンターレに3-5と打ち合いに敗れた。試合後、会見場には厳しい顔つきの長谷川がいた。
「もっともっと立ち上がりから襲い掛かるような迫力に、欠けていたと思う」
前線に並ぶパトリックと宇佐美はACL準決勝第1戦、広州恒大とのアウェー戦(9月30日)の疲労が取れていないのか、試合のスタートから体が重そうだった。ボールを持つ川崎の3バックに対して前線からプレッシャーをかけられないことに、指揮官は不満を持った。
「サボったら、すぐに代えるぞ」
ハーフタイムの際、2トップに対してそう「優しく言った」そうだ。やはりボスの一言は効いたようだ。後半に入って「だいぶ行くようになった」と指揮官も一定の評価はした。だが苦言を呈すことも忘れなかった。
「貴史はまだまだ“お子ちゃま”かな、と。厳しい試合のなかで結果を出していければ本物になる」