サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
大勝の裏で遂に起こった「政権交代」。
西川周作が発揮した集中と、叱責。
posted2015/09/11 10:40
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
小さなうねりが起こっている。
9月3日にカンボジア、同8日にアフガニスタンとのW杯アジア2次予選に臨んだ日本は、予定どおりに勝点6を積み上げた。カンボジア戦まで湿りがちだった攻撃陣は、アフガニスタン戦で久しぶりに大量得点を記録した。香川真司が、岡崎慎司が、本田圭佑が、原口元気が、称賛に包まれている。
大切な事実がひとつ、見落とされている。
長く正GKを務めてきた川島永嗣がいないなかで、日本は2試合連続無失点を記録したのである。32歳の経験者はスタンダール・リエージュ退団後の新たな所属先を見つけられず、23人のリストから外れていた。
川島に代わってゴールマウスを任されたのは、浦和レッズ所属の西川周作だった。本田らと同じ北京世代の守護神は、すでに29歳となっている。
アフガニスタン戦を終えた西川は、落ち着いた口調で切り出した。
「2試合連続の無失点ということで、最低限の仕事はできたかと思います。アウェーでこうやって無失点で終われたのは、チームとしても個人としても自信になります。これをまた所属チームに持ち帰って還元したいですし、自分自身のプレーにも生かしていきたいです」
一方的な展開でも、研ぎ澄ませていた神経。
5日前のカンボジア戦に続いて、アフガニスタン戦も守備機会は少なかった。GKにとっては、プレーのリズムを作りにくい展開である。
それでも西川は、積極的にゲームに参加した。マイボールの時間帯では、ペナルティエリアから大胆に飛び出した。テレビ画面に映らないエリアで、彼は失点の兆しに神経を研ぎ澄ませていたのである。
「風や気圧の影響で、ボールの伸びかたがいつもとは違っていました。そのなかで、ディフェンスラインの背後へのボールは、できるだけ自分が処理しようと気を付けていました。それから、クロスボールとセットプレーの対応ですね。相手がもうホントに引いてきたので、セットプレーでやられることは絶対に避けなければいけない。そういうことを考えながら、とにかくトライし続けました」