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日本史上初の入賞可能性を持つ男。
十種競技の「キング」、右代啓祐。 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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posted2015/08/22 10:10

日本史上初の入賞可能性を持つ男。十種競技の「キング」、右代啓祐。<Number Web> photograph by AFLO

10種類の競技の総合得点を競う十種競技では、全ての筋肉、全ての動きが必要になる。つまり右代啓祐は、「日本で一番運動神経がいい」男という事ができるだろう。

 過去、世界陸上選手権で日本勢の注目種目と言えば、マラソン、400mリレー、そして室伏広治のいたハンマー投、さらには世界水準の選手が相次いでいたやり投だった。しかし今年の大会(8月22日開幕、中国・北京)に向けては、桐生祥秀が脚の故障で戦列離脱、室伏は休養中と、注目選手が出場しない。それだけに、一般的な注目度は、あまり上がっていないかも知れない。

 だがその一方で、陸上競技ファンの間では、新たな注目種目が出てきている。十種競技だ。昨年、第一人者の右代啓祐(29=スズキ浜松AC)が8308点というワールドクラスの点数で日本記録を樹立、仁川アジア大会では、この種目で24年ぶりの金メダルを日本にもたらした。

 十種競技は、欧州では人気の高い種目。走る、跳ぶ、投げるの総合力が問われるため、勝者は「キング・オブ・アスリート」の称号を得る。1人の選手が複数の種目を行う混成競技は古代オリンピックでも実施されており、当時も、こうした総合力で優れているアスリートが、尊敬を受けていた。

 近代オリンピックが始まって以降も、混成競技といえば欧米勢がリードしてきた。1904年の第3回セントルイス五輪から行われてきた混成競技において、欧州、北中米以外の地域から出たメダリストは、1960年のローマ五輪の十種競技で銀メダルを獲得した楊伝広(台湾)だけだ。

日本人は五輪史上12位が過去最高。

 日本勢は五輪史上、1920年と1928年に記録した12位が最高の順位となっている。短距離の100mなどと同様に欧米がリードしてきた種目において、右代は今年の世界選手権、そして来年のリオデジャネイロ五輪で、日本勢初の8位入賞を狙えるレベルまで成長してきたのである。

 前回の世界陸上2013年モスクワ大会で、十種競技のレベルは高かった。8位の記録は8370点。今年の北京大会でも、やはり8300点が入賞のラインになると予想できる。

 今年の右代は、スタートでやや調子が上がらなかった。4月の日本選抜陸上和歌山大会では7739点で2位。中でも、得意なはずの棒高跳が4m60(自己ベスト4m90)、やり投が61m75(自己ベスト73m82)に終わっていた。

 5月にはオーストリアで開催された混成競技の大会、ゲーチス大会で7927点、ここで、やり投は64m68と記録を伸ばしたものの、棒高跳は再び4m60に終わって、8000点オーバーはならなかった。

【次ページ】 棒高跳の難しさを示すブブカの言葉。

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