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栗山流“全員野球”の重要選手に。
石川慎吾の情熱、暴走、右方向。
posted2015/07/29 10:50
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
NIKKAN SPORTS
首位ソフトバンクを追いかける上で負けられない、3位西武との戦いで3連勝。
日本ハムが重要なカードを完勝した。
「俺には、誰が(活躍しないといけない)っていうのはないんだよね。もちろん、(陽)ダイカンや(中田)翔にチームを引っ張っていってもらいたいとは思うよ。でも、何度も言っているように、みんなで力を合わせて戦っていく。調子のいい選手を使っていくしかない。そう思っているんだよね」
指揮官の栗山英樹がいうように、今の日本ハムはまさに全員で戦っているという印象が強い。「全員野球」というフレーズはプロ野球ではあまり聞くことはないが、高校野球のような戦いが指揮官の目指すところのようだ。
西武の守護神・高橋に対し、代打に送られた石川慎吾。
7月24日からの西武との3連戦では、2戦目がまさにそれを象徴するゲームだった。
エースの大谷翔平が5失点しながらなんとか初戦をモノにして、迎えた2戦目。日本ハムは左腕の吉川光夫を立てたが、序盤から失点を重ねて常にリードを許す苦しい展開。9回表を迎えて1点のビハインド、相手のマウンドには西武の絶対的クローザー・高橋朋己が上がっていた。
しかし9回表、この絶望的ともいえる展開の中、先頭の陽が四球で出塁すると、反撃が開始される。1死一、二塁とチャンスをつかむと、栗山監督は6番・佐藤賢治のところで代打に石川慎吾を送った。入団4年目の石川はそう経験値の高い選手ではないが、対左投手対策に準備している右の好打者である。
そして、このラッキーボーイが結果を残す。西武の中堅手・秋山翔吾の頭上を越えるエンタイトル適時二塁打で同点としたのだ。続くレアードが左翼フェンス直撃の決勝適時二塁打。敗色濃厚の中で相手クローザーを打ち崩したことは、1勝以上の価値があった。
怪我から復帰して好調な3番・陽が起爆剤となり、一時はお荷物に思われた助っ人のレアードが下位打線で走者を一掃する役目を担う。第3戦でも2人の活躍が連勝を呼んでいた。彼らが今の日本ハムを引っ張っているのは間違いないが、この3連戦だけでいえば、石川の活躍も見逃せない。