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町への利益は9億円以上? 昇格のラス・パルマスに学べ。
~天才バレロンと夢物語の結実~ 

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豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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posted2015/07/13 10:30

町への利益は9億円以上? 昇格のラス・パルマスに学べ。~天才バレロンと夢物語の結実~<Number Web> photograph by AFLO

 14年ぶりとなったラス・パルマスのリーガ1部昇格が、カナリア諸島に興奮をもたらしている。

 ラス・パルマスは1年前も昇格PO決勝に進んだが、後半ロスタイムに失点し、直前で昇格を逃すという苦い記憶があった。1年越しの昇格に、試合後には5万人が町の中心部で朝4時まで祝い続けた。

 喜んでいるのはサッカーファンだけではない。ピッチ上での活躍と同じくらい期待されるのが、ラス・パルマス及びカナリア諸島への経済効果だ。カナリア諸島の観光業は数年間、経済危機の影響で停滞。ようやく回復のきざしをみせつつある中、地元チームの1部昇格は経済のさらなる追い風になると見られている。

 ホテル、レストラン、観光施設はいずれも集客増を期待。大西洋に浮かぶカナリア諸島は本土から3時間以上かかるため「試合だけ見て帰るのではなく数日の休暇をとる」という、いわゆる「ミニバカンス客」の取り込みに観光業界全体で取り組んでいる。レアル・マドリーやバルセロナなど、世界的に引きのあるチームが週末に試合をするとなれば、海外の観光客へのアピールにもなる。スペイン商工会議所によると、町への利益は年間700万ユーロと試算されているそうだ。

「天才の魔法」を楽しむチャンスが、あと1年できた。

 地元の盛り上がりを嬉しそうに眺めるのが、この夏40歳を迎えた元スペイン代表MFのフアン・カルロス・バレロンだ。

「ラス・パルマスを1部にあげるためにここにきた。島の人々を喜ばせたかった」と語る彼がクラブに加入したのは、チームが2部にいた2年前のこと。低迷する島のクラブを1部へ戻すという新たなモチベーションのもと、2部のピッチで戦った。現チームのスターは、POでも2点を決めたアルゼンチン人ストライカーのセルヒオ・アラウホだが、ファンに最も愛されているのは彼だ。来季も現役続行を決意し、マルカ紙は『スペインは天才の魔法をあと1年は楽しむことができる』と、昇格の主役としてとりあげた。

 年を重ねた元有名選手が田舎の小クラブを昇格に導く――そんな物語に惹かれたファンも多く、国内外からラス・パルマスとバレロンへ取材が殺到中だという。

 ピッチ内での結果と宣伝効果。ラス・パルマスにとってバレロンの獲得はあらゆる意味で成功だった。資金力に限界のある中小クラブも見習うべき一例だろう。

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