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武藤嘉紀はマインツのスター候補。
メディア、監督、選手が既にトリコ!
posted2015/07/14 11:30
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
武藤嘉紀は晴れやかな表情を見せた。7月7日の17時の少し前、フランクフルト国際空港の到着ゲートから現れたときのことだ。
11時間近くの長旅の疲れは感じさせない。手で押しているカートにはリモワ社の大きなスーツケースと、機内に持ち込めるサイズのルイ・ヴィトンのボストンバッグ。さらには、航空会社のチェックインカウンターの気づかいがあったのか、ビニールのカバーのかけられた真新しそうなスーツケースが置かれている。そして、その上には東京西川のマットレスが乗っていた。
新加入の選手が空港に到着したときに記者やファンが殺到し、それを警備員が押し返し、倒れる人が出てくる。そんな光景も、実は少なくない。長旅の疲れもたまっているところで、いきなりカメラをつきつけられれば、不信感を抱いたり、面倒に感じても不思議ではない。
しかし、武藤はまるでシャワーを浴びたあとに振りかけた香水の匂いが漂ってきそうなさわやかさで、日本のTV局の取材に答えた。
「ドイツは素晴らしい国なので、ここで活躍できるように頑張っていきたいなと思います」
メディアに親指を立てて応え、予定より早く練習場に。
武藤が立ち止まって軽く取材に応えたために、混乱は起こらなかった。地元記者がアイフォンをとりだし、翌日の紙面用の写真をお願いすれば親指をたてて応える。そして、その写真は翌日の紙面に大きく躍った。クールな振る舞いだ。
翌朝には、身体の異常がないかどうかを調べるメディカルチェックに臨んだ。当初は午後からの個人練習には参加する予定だったのだが、10時からの練習に間に合うように武藤は練習場へと向かった。これにはチーム関係者は驚くとともに、ムトウはやる気に満ちあふれているじゃないか、と感心したという。その翌日に行なわれた入団会見では、ドイツ語のスピーチをした時と、スーツ着用の理由を語った時、2回にわたって出席したメディアから拍手があがった。