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あるプロレスラーの死地彷徨――。
ヨシタツに降りかかった不運と幸運。

posted2015/02/08 10:50

 
あるプロレスラーの死地彷徨――。ヨシタツに降りかかった不運と幸運。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

米国で活躍していた頃のヨシタツ。WWEという世界最高峰のリングで覚えた華やかなスタイルを、再び日本で披露する時を待ちたい。

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

PROFILE

photograph by

NIKKAN SPORTS

 ヨシタツというプロレスラーをご存知だろうか。

 本名は山本尚史(なおふみ)。2002年3月に新日本プロレスに入門し、同年10月にデビュー。'07年11月から無期限の海外遠征を経験した後、翌年2月に新日本を退団し、同年4月に世界最大のプロレス団体WWEのトライアウトを受験し、自らの力で契約をもぎ取ったレスラーだ。

 リングネームを「ヨシ・タツ」に変えて米国で本格デビューすると、世界各地から一流レスラーが集結するWWEで、コネはない、英語もほとんど喋れないところから、壮絶なサバイバル競争の日々に明け暮れるようになった。

 昨年6月にはWWEを離れることとなったが、米国ではトップレスラーとして多くのファンの心に残るような存在となっていた。実際に当時は凄い人気で、彼のツイッターアカウントは世界各地の32万人ものファンからフォローされるほどだった。

なぜプロレスラーは怪我を隠すのか?

 そんなヨシタツが昨年10月13日、7年ぶりに新日マットに姿を現した。

 AJ対棚橋弘至のIWGPヘビー級王座戦でリング内に乱入し、棚橋のベルト奪取を援護した。その後11月8日にAJとのスペシャル・シングルマッチ、さらに11月22日から開幕するワールド・タッグ・リーグに棚橋とタッグを組んでの出場も決定。まさに万全な“凱旋花道”が用意されていたのである。

 しかし復帰初戦となったスタイルズ戦で首を負傷するアクシデントに見舞われてしまう。ワールド・タッグ・リーグ開幕戦に強行出場したものの首の状態が悪く、結局翌23日には新日から同シリーズ全戦欠場が発表された。

 ここまで聞くと、何とも不運な結末だと思えるだろう。だが実は、ヨシタツは途方もないぐらい幸運なレスラーでもあった。

 全戦欠場を発表した新日の最終的なリリースでは「首の怪我」としか説明していないが、すでにヨシタツ本人がツイートで明らかにしているように正式な負傷は「第2頸椎粉砕骨折」。まさにとんでもない負傷だったのである。昨年の大晦日に入院先のヨシタツを訪れた際、彼はその経緯を包み隠さず証言してくれた。

【次ページ】 絶対に骨折は無い――危うい自己判断の末。

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