フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
サプライズが起こったNHK杯男子。
村上大介の快挙と無良、羽生の収穫。
posted2014/12/01 12:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
AFLO
11月28日から大阪のなみはやドームで開催されたNHK杯。早くもGPシリーズ最終戦となったこの大会は、誰も予測していなかった展開となった。
SPの後、トップ3人は無良崇人、ジェレミー・アボット、そして村上大介という順位だった。中国杯での負傷から回復したばかりの羽生結弦はジャンプをミスして5位だった。
フリーでは順位が落ちると予想していた村上。
「皆さん、明日もこの場に戻ってきたいのだと思いますが、羽生選手に追い越されないようにするためには、どんな演技をすればよいと思いますか?」
そんな質問が会見で出ると、まず無良がこう答えた。
「彼がこの場にいないというのは、想像していなかった。でも彼が試合に出てくれたことは、僕としてすごく嬉しいこと。フリーは同じ『オペラ座の怪人』で、ライバルではあるけれど、仲間だと思っています。自分の位置をキープしたいとは思いますけれど、彼はすごく心が強い選手。それに負けないように、自分の演技をしっかりやろうと思います」
3位だった村上大介は、こう口にした。
「羽生選手は僕のアイドル。明日は本当に頑張って欲しい。僕自身は、明日はきっと順位は落ちると思う」
そう言うと、会場内から暖かい笑いがもれた。だが彼は、間違っていた。
史上6人目の日本男子NHK杯チャンピオン。
翌日のフリーでは、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のメロディにのって、村上は素晴らしい演技を見せた。トウループよりもサルコウが得意という彼は、フリーで2度の4回転サルコウに初挑戦。どちらもきれいにきまった。
「いったいどうなるのだろうか、と頭の中は真っ白でした。でも2つ目の4回転を降りたとき、これはひょっとして練習通りにうまくいけるんじゃないか、と思ったんです」
23歳になる彼は、これまでGP大会でメダルをとったことがない。本人も言っているように、フリーではミスが出て順位を落とすのではないかという予想はみごとに裏切られた。あれよあれよという間に、合計4回転2回と、6回の3回転ジャンプを小気味よく決めていった。全員の演技が終わってみると、村上の優勝だった。NHK杯史上、6人目の日本男子チャンピオンである。