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<リーグ3連覇の舞台裏> 原巨人 「トータルベースボールという革新戦術」 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNanae Suzuki

posted2014/10/14 11:30

<リーグ3連覇の舞台裏> 原巨人 「トータルベースボールという革新戦術」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki
打順を固定しない「日替わりオーダー」に
結果がともなわず、批判も浴びた前半戦。
だが6月以降1度も首位を明け渡さなかった
粘り強さの源泉は、その“全員野球”にあった。

 1961年。

 この年、巨人は通算17度目の優勝を果たしているが、その中味は惨憺たるものだった。

 チーム打率2割2分6厘5毛はリーグ最下位。長嶋茂雄が首位打者を獲得したが、その他の打者は打撃30傑の下位に沈み、エース・藤田元司も肩痛で20勝投手は一人もいなかった。

 それでもチームを優勝まで導いたのは、この年、第8代監督に就任した川上哲治だった。

 川上は戦力的に乏しい中で毎年のように優勝していたロサンゼルス・ドジャースに注目。そのドジャースのアル・キャンパニスの著した『ドジャースの戦法』を教科書に、エンドラン、ブロックサインなど、新しい野球を導入。戦力的には決して充実しているとは言えなかった巨人を、優勝へと導いた。

チーム打率リーグ最下位、救援陣も苦しんだが……。

「ジャイアンツ80年の歴史の中でも、得点力という意味では下から1番目か2番目。決して褒められたチームではなかった」

 9月26日。横浜スタジアムで3年連続36度目のリーグ制覇を決めた巨人監督の原辰徳は、優勝インタビューで今季のチームをこう振り返った。

 優勝を決めた137試合目まででチーム打率2割5分6厘はリーグ最下位。打撃30傑を見ると2割9分7厘で13位にいる長野久義が最高で、2割7分8厘で17位の坂本勇人、そして25位の村田修一から片岡治大、阿部慎之助と主力3人が2割5分前後で打撃成績の一番下に並んでいる。

 さらに今年の巨人が抱える厳しさは、得点力だけではなかった。

 投手陣も2ケタ勝利は菅野智之の12勝と杉内俊哉の10勝だけ。去年までの連覇を支えたリリーフ陣の防御率も山口鉄也が昨年の1.22から3.04、スコット・マシソンが1.03から3.58と軒並み大幅ダウンしている。

 まさに戦力的脆弱さという点では、川上が率いた'61年と大差ないチームだったわけである。ただ、それでも今年の巨人も、あのときと同じように勝った。

 そこには戦力的には劣りながらも、チームを機能させるためのトータルベースボールとでも呼ぶべき革新戦術があり、その戦術を理解した選手の動きがあったのだった。

【次ページ】 優勝が決まった137試合目までで106通りのオーダー。

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