MLB東奔西走BACK NUMBER
元中日・チェンがMLBで開花するまで。
2人のコーチと、黒田博樹の存在。
posted2014/09/23 10:40
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph by
Getty Images
9月15日、オリオールズとの試合を控えたブルージェイズの監督室で、番記者からジョン・ギボンズ監督にこんな質問が向けられた。
「(オリオールズとブルージェイズは)開幕前はお互いに強力な打撃を誇りながらも、投手陣に不安を抱えていた似たものチームだった。途中まで首位を争いながら現時点でここまで差が開いてしまった両チームの違いは何だったと思うか」
記者の質問も当然だろう。
7月までメジャー屈指の激戦区といわれるア・リーグ東地区で、熾烈な首位争いを続けていた両チーム。
しかし、9月時点では11.5ゲーム差をつけられ、オリオールズの独走を許してしまったからだ。ギボンズ監督は複数の要因を挙げていたが、とにもかくにも8月の戦い方がすべてだったように思う。
オリオールズは8月のメジャー最多タイの月間19勝を記録する一方で、ブルージェイズはメジャー最少タイの9勝。
ティルマンとチェン、後半戦は2人で12勝1敗。
この差が生じた原因が、投手陣にあるのは明らかだ。
オリオールズの8月のチーム防御率はリーグ5位の3.08だったのに対し、ブルージェイズは同13位の4.52。
この時期、ブルージェイズは自慢の打撃も低迷したことで、それまでのように投手陣の穴を埋めることができなかった。対してオリオールズは不安視されていた投手陣が後半戦、着実に力をつけてきたのだ。
特に先発陣の躍進は目を見張るものがある。
シーズン前半戦は、主力先発陣で最も防御率が良かったのは、バド・ノリス投手の3.96。だが、後半戦ではこれが一変する。
中でもクリス・ティルマン投手が防御率2.01、ウェイン・チェン投手が2.71と、抜群の安定感を発揮した。
後半戦、2人の成績はティルマン5勝0敗、チェン7勝1敗、合わせて12勝1敗と、まさにこの2人が先発陣を牽引し、オリオールズに17年ぶりの地区優勝をもたらしたと言えるだろう。