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もがき、問い続けるバロテッリ。
~『どうしていつも俺なんだ?!』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/07/29 10:00

もがき、問い続けるバロテッリ。~『どうしていつも俺なんだ?!』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『どうしていつも俺なんだ?! 悪童マリオ・バロテッリ伝説の真実』フランク・ウォラル著 森田義信訳 新潮社 1700円+税

 イタリア代表FWにまつわる逸話は、嘘も誠も含めて無数に存在する。豪邸のバスルームで花火。ユース選手に向かってダーツを投げる。街中をドライブ中にサポーターとハイタッチ。芝生に対するアレルギーで試合続行断念。

 悪童バロテッリ、初のバイオグラフィという本書にて、その噂の真偽を確認することは容易い。けれど、それは、この本の一部でしかない。マリオ・バロテッリという人間をつくりあげた国、イタリアにおける多人種社会構築の遅れや常に悪役を求めるイギリスメディアの天質。そんな側面が、彼の人生の映し鏡のように描かれているのだ。そして、それらとも対峙し続ける、最高の素質を持ったフットボーラーの素顔も。

常に人々に「WHY ALWAYS ME?」と問いかけてくる存在。

 よく語られるように、彼の出自は円満ではなかった。けれど、バロテッリが時おり見せる破綻した行為の言い訳を、その出自に求めるような後ろ向きの本ではない。ずいぶんとエキセントリックではある23歳のフットボーラーが、何を求め、何を護り、どんな人間と関わってきたのかに、まずは素直に耳を傾けよう。父親のようなマンチーニ監督との関係。ユナイテッド関連の著作も多い書き手らしく、エリック・カントナとの比較論もじつに興味深く読める。

 花火事件翌日のダービーで2得点した彼のシャツに書かれていた文言「WHY ALWAYS ME?」。そこにある通り、彼は常に人に問いかける存在だ。自己存在への疑念や不安というと大袈裟だが、誰もが自分に対してもがいている今の時代に必要なアイコンが彼なのかもしれない。

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