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<智将が読み解くW杯のトレンド> 風間八宏 「武器なきチームが消えていった」 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

PROFILE

photograph byAtsushi Kondo

posted2014/07/29 11:00

決勝へ進んだドイツとアルゼンチン、名勝負を演じたチリやコロンビア、
不完全燃焼で大会を終えた日本。
明暗を分けた各国の戦術を、J屈指の名将・風間八宏が斬る。
風間八宏 Yahiro Kazama
1961年10月16日、静岡県生まれ。筑波大学在学中に日本代表選出。'84年、バイヤー・レバークーゼンIIへ入団、5年間ドイツでプレー。'89年に帰国し、サンフレッチェ広島で活躍。'97年に引退。'12年より川崎フロンターレ監督。

point.1 スタイルと武器を持つ国が勝ち上がった。

 今回のブラジルW杯では、チームとして「スタイル」と「武器」を確立しているところが順当に勝ち上がってきた。番狂わせが少なく、その2つを持っていないチームがグループリーグで姿を消している。

 例えば、アルゼンチン。武器は言うまでもなくメッシであり、彼を最大限に活かすスタイルに辿り着いた。前回の南アフリカW杯まではメッシをどう活かせばいいか分からないといった感じを受けたが、その答えを見つけた格好だ。

 メッシは基本的に動かない。それはメッシに合わせて周りが動いているからであり、逆に頻繁に動かれたほうが合わせづらくなる。動かなくともボールを受ければメッシなら何とかしてしまう。グループリーグのイラン戦でも試合終盤、止まっているメッシにパスが渡り、そこから決勝ゴールが生まれている。そう考えると彼の運動量が少ないというデータにあまり意味などなく、それよりも彼が何回ボールを触り、何回決定機を生み出しているかが何より重要になってくる。

オランダは下がって守ったことでロッベンがより活きた。

 動かないメッシに対してボールを渡せないのがダメというのがアルゼンチンの発想だ。こういったメッシの活用が、アルゼンチンのなかでうまく整理された印象を受けた。

 このアルゼンチンに準決勝でPK戦の末に敗れたオランダも、武器とスタイルが色濃く見えたチームだった。

 武器は一人でボールを運べるロッベンを前線で比較的自由にして7、8人でいかにして守るか、というスタイル。最終ラインの選手たちはスピードがそれほどなく、背後を取られてしまうと脆い。そのため5バック気味にして下がって背後のスペースを消した。そうすれば高さではあまりやられないし、逆に下がったことでカウンターの際に、よりロッベンが活きる。

 システムをいじったり、選手を入れ替えても考え方は変わらないから、選手の戸惑いもない。弱点を埋めることで、逆に武器が活きるというのが今回のオランダの特徴であったように思う。

【次ページ】 チリの3バックは前から守り、細かくパスをつなぐため。

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