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<今季NBAを最も沸かせた男> ケビン・デュラント 「初MVPは涙と共に」 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2014/06/11 11:00

“2番手”としての自分と決別すべく、戦い続けたシーズンだった。
全選手の頂点に輝いた今季は、これまでと何が違ったのか。自然体の
トッププレイヤーは、“人生において大切なこと”を見つけたという――。

 その時、ケビン・デュラントはゴールに背を向け、床に座り込んでいた。

 ウェスタン・カンファレンス準決勝、対ロサンゼルス・クリッパーズ第5戦。勝ったチームがシリーズに王手をかける大事な試合だった。

 奇跡の追い上げを見せていたオクラホマシティ・サンダーに、試合残り6.4秒、2点ビハインドの場面で逆転のチャンスが巡ってきた。クリッパーズのクリス・ポールのファウルで、ラッセル・ウェストブルックに3本のフリースローが与えられたのだ。

 デュラントが床に座り込んだのは、その時だった。ウェストブルックがフリースローを打とうとしていたサイドから遠ざかり、彼に背を向け、反対側のエンドライン近くの床にペタっと座り込んだ。フロアを見つめ、その後顔を上げて、エンドラインのサンダー・ファンが喜んだのを見てフリースローが決まったことを確認すると、ガッツポーズで喜んだ。

 デュラントは、後からその行動を説明した。

MVPを受賞したスーパースターなのに、不運を呼び込む?

ケビン・デュラント Kevin Durant
1988年9月29日、ワシントンD.C.生まれ。2007年に、シアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)でプロデビュー。2季ぶり4度目の得点王に輝いた今季、MVPを初受賞。206cm、109kg。

「別にチームメイトを信用していないわけではない。僕はいつも不運を呼びこんでしまうんだ。僕が試合を見るとレッドスキンズ(贔屓のNFLチーム)は負けるし、テキサス大(母校)も負ける。僕が見ると希望しているのと反対の結果になる。だから後ろを向いていた」

 NBAでも、試合前の食べ物や服などで縁起を担ぐ選手は多い。しかし試合中に、自分が不運を呼ぶからと、背を向ける選手は初めて見た。しかもそれは、つい数日前にリーグMVPを初受賞したばかりの、押しも押されもせぬスーパースターなのだ。

 しかし、よく考えると、これはデュラントらしい光景でもあった。彼の魅力は、いつも自然体なところだ。飾らず、必要以上に自分を大きく見せようとすることもなく、一見飄々と、難しいプレーをやってのける。身長206cmの長身で、ガードのようなボールハンドリングでドライブインすることも、次々と3Pシュートを決めることも、彼がやると簡単なことのように思えてしまうほどだ。

【次ページ】 プレー効率のよさを象徴した「50-40-90」達成。

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