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新天地で甦る小笠原、涌井、一岡。
競争を時に上回る「お前しかいない」。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNaoya Sanuki

posted2014/05/08 10:50

新天地で甦る小笠原、涌井、一岡。競争を時に上回る「お前しかいない」。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

新天地ロッテで先発に固定され、復活を期す涌井秀章。心機一転、今年は三代目J Soul Brothersの「SO RIGHT」を入場曲にマウンドへ向かう。

 個人事業主であるプロ野球選手にとって、もっとも大事なこと。それはチームに必要とされることだ。

 2010年、アメリカで出番が激減していた岩村明憲(ヤクルト)が楽天入団を決めたとき、こんな風に語っていたものだ。

「アメリカでもう一度、這い上がりたいという気持ちもあった。でも、星野(仙一)監督に必要だと言われて、砂漠化していた僕の心が一瞬にして水浸しになった」

 必要とされることの喜びを、これほど端的に語っている言葉もない。

 結局、岩村は楽天では再起できずに終わったものの、今シーズン、その一言で復調の兆しを見せているのが中日の代打の切り札、小笠原道大だろう。

 FA宣言し、巨人から中日へ移籍した小笠原は会見でこう語った。

「(落合博満GMから)必要だから来て欲しいと言われた。この言葉だけで十分。(胸が)いっぱいになりました」

恩師の元へ身を寄せた涌井と、復活を待つ伊東。

 近年、この言葉に人一倍飢えていたと推測されるのは、今年からロッテのユニフォームを着ることになった涌井秀章だ。

 涌井の成績が下降し始めたのは、年俸で球団ともめた2011年以降だ。もちろん、それだけが原因ではないだろうが、その頃から球団との信頼関係がギクシャクし始めたように思える。その後、週刊誌で相次いで女性スキャンダルが報じられたときも、球団の涌井に対する態度は冷やかに感じられた。ポジションも先発から抑えに配置転換されるなど、成績を考えればやむを得ない面もあったが、かつては日本を代表するエースとして活躍し、'09年に沢村賞まで獲得した涌井にとっては寂しさを感じずにはいられなかったのではないか。

 涌井は感情表現に乏しいが「表現するのが下手くそなだけ」で、実際は人一倍、意気に感じるタイプだ。だからかつての恩師、伊東勤が指揮するロッテへの移籍は、しごく当然のことに思えた。

 ここまで、まだ2勝4敗と結果を出し切れていないが、伊東は辛抱強く涌井が本来の姿を取り戻すのを待つ構えだ。少し時間はかかるかもしれないが、いつか伊東の信頼が涌井を再起させる気がする。

【次ページ】 巨人から人的補償で広島へ移籍した一岡竜司も。

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