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2.59回のミスと、6.083回のアクション。
2010年W杯に見る「ゴールの秘密」。 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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posted2014/05/01 10:30

2.59回のミスと、6.083回のアクション。2010年W杯に見る「ゴールの秘密」。<Number Web> photograph by AFLO

2010年のW杯で、得点を決めるまでの平均アクション回数が最も多かったコートジボワール代表。ドログバ(右)は現在も代表の中心選手として活躍している。

「2010年W杯の失点シーンを遡ると、平均2.59回のミスが起こっていた」

ユルゲン・ブッシュマン教授(ケルン体育大学)

 W杯出場32カ国の中で最もデータ分析に力を入れているのは、おそらくドイツ代表だろう。以前にこのコラムでも紹介したとおり、ドイツサッカー協会はケルン体育大学と協力し、学生45人を動員して出場国を徹底分析している。ケルン体育大学という名門研究機関と優秀な学生がいるからこそ実行できるビッグプロジェクトだ。

 もちろん彼らの分析は、準備期間に留まらない。本大会中もデータ分析によって“W杯の法則”を浮かび上がらせることに挑む。そして、膨大なデータから得られた結論を論文だけでなく、一般向けに書籍として出版している。

 そのひとつが、昨年3月に発売された『近代サッカーにおけるゴールの秘密』(Torgeheimnisse im modernen Fussball, Meyer&Meyer Verlag)だ。著者はケルン体育大学のデータ分析を統括するユルゲン・ブッシュマン教授、その下で働くカイ・クルーガー研究員、アレクサンダー・オットー研究員の3人。ページを開くとグラフがずらりと並んでおり、サッカー分析のセミナーを覗いたような気分にさせてくれる。

 今回は同書から彼らの分析結果を引用して、紹介しようと思う。ブッシュマン教授らは2010年W杯の分析から以下のことを導き出した。

失点シーンに潜む、平均2.59回のミス。

 まずは【守備】に関する分析結果を3つ。それぞれに対して、筆者が補足を書いた。

●結果1:失点シーンを遡ると、平均2.59回のミスが起こっていた。

 同書では23のミスを定義している。DFのドリブルへの対応ミス、タックルのミス、ヘディングのミス、GKのパンチングミス、GKのポジショニングミス、グループのポジショニングミスなどだ。

 ブッシュマン教授らは、相手の攻撃開始からゴールまでの守備側のミスをカウント。平均2.59回のミスが起こっていた。

 大雑把に言えば、1つのミスではなかなか失点せず、ミスが連続したときに危機に陥るということだ。失点したときは、1人の大きなミスに目が行きがちだが、「複数の選手がミスをしていなかったか」という厳しい目でチェックする必要がある。

【次ページ】 ペナルティエリア内のミスは致命的。

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