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ドゥカティが仕掛けた、
起死回生の裏技。
~モトGP「オープン」鞍替え騒動~ 

text by

遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2014/03/30 10:00

今季、ドゥカティに移籍してきたC・クラッチロー。昨年のランク5位からの躍進なるか。

今季、ドゥカティに移籍してきたC・クラッチロー。昨年のランク5位からの躍進なるか。

 モトGPに参戦するドゥカティが、開幕戦カタールGPを目前に、参戦カテゴリーを「ファクトリー」から「オープン」へと変え、これが大きな波紋を呼んでいる。

 ここ数年、モトGPの車両規定はワークス勢に厳しく、プライベートチームを優遇する方向へと変化してきた。これはコスト削減と参加台数の安定確保のためだ。グランプリを運営統括するドルナはその過程でコスト削減の大きな柱として共通ECU(エンジン・コントロール・ユニット)を強く推進してきたが、メーカーは技術開発がなくなるとして強く反対。その妥協案が独自ソフトを使用する「ファクトリー」と共通ソフトを使用する「オープン」の棲み分けであり、二つのグループの格差を縮めるためにホンダは市販レーシングマシンを供給、ヤマハはワークスエンジンのレンタルを決めた。

 その狙いは見事に当たった。今年の最初の話題は、ヤマハの旧型ワークスマシンで「オープン」に参加するA・エスパルガロがテストで見せた速さだった。ここまでは良かったのだが、それを見たドゥカティが裏技を思いつく。共通ECUを供給するマニエッティ・マレリ社に自分たちが開発したプログラムを共通ソフトとして提供し、同時に「ファクトリー」から「オープン」に鞍替えしてしまったのだ。

「ファクトリー」で参戦する大前提のルールだけに……。

 エンジンに関して燃費など様々な制約から解放されたドゥカティは、フルパワー仕様になり、リザルトも急上昇。開幕前のテストでは、ホンダ、ヤマハのファクトリー勢との差を一気に縮めた。

 長い間、低迷してきたドゥカティの起死回生を狙ったカテゴリー変更は、確かにルール違反ではない。しかし、現在のモトGPのレギュレーションは、3メーカーのワークスマシンが「ファクトリー」で参戦するという大前提を元に作られてきたルールばかりであり、掟破りともいえる方向転換に非難の声が上がっている。それを受けてドルナは、「ファクトリー2」という新しいカテゴリーを提案したと言われているが、これも揉めそうだ。

 モトGPマシンの心臓ともいえるECUを巡る騒動の行方は、開幕を前に、コース上の戦いもルール作りでも予測がつかない状態になっている。果たして、どう決着するのだろうか。

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