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低迷ミランを変える「ホンダ・レッスン」。
3戦目で早くも見せた“上から目線”。  

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT

posted2014/01/21 11:20

低迷ミランを変える「ホンダ・レッスン」。3戦目で早くも見せた“上から目線”。 <Number Web> photograph by Enrico Calderoni/AFLO SPORT

試合中も、チームメイトに何度となく指示を出す本田圭佑。その様は、新加入選手というよりは、まるで最古参のリーダーのようだ。

 ミラノ入りしてから3週目に突入し、本田圭佑から粋なファンサービスが飛び出した。

 ベローナ戦の翌日のことだ。本田は室内メニュー後もクラブハウスに留まり、とっくに着替えたはずなのに、2時間近く出て来なかった(きっとイタリア語の授業を受けていたに違いないのだが、まだ確認できていない)。気がつけば日が落ち、森の中にある練習場は闇に包まれた。

 それでもゲート前には数人のファンが、辛抱強く待っていた。ようやく金髪がクラブハウスの扉から見えると、大きな歓声があがり、イタリア人男性のひとりはボールを頭の上に高く掲げて「ホンダ~!」と大声をあげた。ただし、ゲートからクラブハウスは約30メートル離れている。もし気がついたとしても、車に乗ってから来ると思われた。

 ところが、本田の行動はもっと粋だった。

 抱えていたセカンドバッグを個人トレーナーに渡すと、黒いジャケットをなびかせながら、悠然とゲートまで歩いてきたのだ。窓越しではなく、肌が触れ合う距離感。本田はその場にいた全員に対して、サインと記念撮影に応じた。

 ファミリーに迎え入れられたような一体感が、そこにはあった。

本田にとって、ベローナ戦は「レッスン」だった?

 その当日の朝、本田はメディアにおいて、厳しい扱いを受けていた。ベローナ戦で先発しながら、決定的なプレーができなかったからである。『ラ・ガゼッタ・デロ・スポルト』の採点は5.5点で『コリエレ・デロ・スポルト』は5点。いずれもロビーニョとともにチーム最低点だった。

 だが本田にとっては、いくら低い点数をつけられようが、痛くも痒くもなかったに違いない。なぜなら、本田のコメントを注意深く聞くと、真剣勝負ながらも、この試合を「レッスン」のひとつとして捉えていたフシがあるからだ。

 幸運にも筆者は『スカパー!』のフラッシュインタビューの仕事で、ベローナ戦後に本田に話を聞くことができた。デビュー3試合目にして、初の肉声。良いときも悪いときも10年以上に渡ってセリエAの中継を続けて来た『スカパー!』とクラブの信頼関係によって実現されたもので、尽力した関係者の方たちに感謝したい(コーディネーターのウィリー宮原さんを、Number 847号の連載『スポーツ仕事人』で取り上げる予定だ。ウィリーさんはビッグクラブと付き合ううえで必要なエッセンスを知り尽くしていた)。

【次ページ】 「長い間ボールを保持することが、チームに足りない」

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