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“被災馬”というもうひとつの運命を
私たちに突きつける映画『祭の馬』。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph by3JoMa Film/Documentary Japan/TOFOO

posted2013/12/12 10:30

“被災馬”というもうひとつの運命を私たちに突きつける映画『祭の馬』。<Number Web> photograph by 3JoMa Film/Documentary Japan/TOFOO

『祭の馬』は、12月14日より東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにてロードショー、他都市では順次公開。詳細はhttp://matsurinouma.com/

 2年前の東日本大震災と原発事故により、「被災地」「被災者」といった言葉から少し遅れて、「被災馬」という言葉がメディアで使われるようになった。

 犬や猫など、ほかの被災動物の所在が岩手・宮城・福島の被災3県の広域にわたっていたのに対し、被災馬がいた場所は、「相双地域」と呼ばれる福島の太平洋沿岸に集中していた。このエリアでは、千年以上の伝統を持つ世界最大級の馬の祭り「相馬野馬追」に出る馬が数多く飼養されているからである。

 相馬野馬追は、毎年7月最後の土、日、月曜日に相馬市と南相馬市で行われる。数百騎が街中を練り歩く騎馬武者行列、鎧を身につけた侍たちが腕を競う甲冑競馬と神旗争奪戦などが呼び物の勇壮な祭りだ。

登場するのは、青森県産の元競走馬、ミラーズクエスト。

 そこに出場する馬のほとんどが元競走馬である――ということを、私は、競馬に関する文章を20年以上書いてきたにもかかわらず、「被災馬」という言葉が出てきて初めて知った。それを恥じ入る気持ちもあり、被災馬の現状をリポートしたり、武豊騎手と相馬野馬追執行委員長の桜井勝延南相馬市長の対談の司会・構成をしたりと、野馬追に関する取材をつづけてきた。そうして、いっぱしの「野馬追通」になったつもりの私に、いくつもの新事実と、取材したくてもアプローチできずにいた被災馬の姿を見せてくれた作品がある。

 今週末、12月14日から東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムで公開されるドキュメンタリー映画『祭の馬』である。

 登場するのは、ミラーズクエストという、青森産の元競走馬。父クリスタルレコード、母ハナガスミ(母の父クロコルージュ)という2007年生まれの牡馬だ。

 父のクリスタルレコードは、美浦・二ノ宮敬宇厩舎で4勝し、準オープンまで出世した。1998年のクラシック世代だから、スペシャルウィークやエルコンドルパサー、グラスワンダーらと同期である。この馬が種牡馬になっていたことを、実は私は知らなかった。

【次ページ】 太らせてから食肉として出荷される、引退後の競走馬。

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