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<THE DAY 2010> 本田圭佑 「日本が甦った日」 ~6月14日:南アW杯 日本vs.カメルーン~ 

text by

佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byAFLO

posted2010/12/09 00:00

 南アフリカ・ワールドカップ、カメルーン戦。本田圭佑のゴールは、日本にいったい何をもたらしたのだろうか――。

 この日を迎えるまで、日本は不安だらけだった。親善試合の日韓戦に完敗し、スイス合宿に入ってから阿部勇樹をアンカーに置く、4-1-2-3の守備的なシステムに変更した。加えて、中村俊輔、楢崎正剛、内田篤人をレギュラーから外し、キャプテンも中澤佑二から長谷部誠に代えた。大会直前の荒療治に、チーム内には激震が走った。

 だが劇薬を処方した甲斐もなく、大会前のイングランド戦、コートジボワール戦は連敗。業を煮やした岡田監督は、ついに岡崎慎司に代えて本田を1トップに置くことを決断した。それは大きな賭けだった。本田の決定力とキープ力を期待しての起用だが、FWは本職ではなく、1トップの経験もなかった。最後の練習試合のジンバブエ戦も急造の感は拭えず、1点も奪えなかったのである。

 守れるが、いかに点を取るか。

 出口の見えない重い課題を抱えたまま、日本はワールドカップに突入した。

「いい準備をしたことで神様がプレゼントしてくれた」(本田)

 カメルーン戦、日本は失点しないことを優先し、守備重視で慎重にゲームを進めた。本田は、「やれることをやる」と意を決し、慣れない1トップを懸命にこなした。

 そして、あの瞬間が訪れた。

 前半39分、松井大輔が1度切り返して左足でクロスを入れた。狙いは大久保嘉人の頭だったが、高地とボールの性能の影響で若干、伸びた。大久保の頭を越えたボールが本田の足元にピタリと納まり、落ち着いて左足で流し込んだ。日本は「いい準備をしたことで神様がプレゼントしてくれた」(本田)というこのゴールを守り切り、2002年日韓W杯チュニジア戦以来の勝利を挙げたのである。

 本田の挙げたゴールは、日本に劇的な変化をもたらした。本田を軸にサイド攻撃が機能し、1トップでイケるという手応えを掴んだ。虎の子の1点を守り切り、ゼロに抑えたことで、守備に対する自信が膨らんだ。不安気だったチームの雰囲気は、一気に明るくなった。だが、一番大きかったのは、「これで勝てるんだ」と、自分たちの戦い方に確信を持てたことだった。

 先制点を奪って、しっかり守って勝つ。

「勝ちパターン」を確立した日本は自信を取り戻し、その後の快進撃を紡いでいった。

 すべては、あの一瞬から生まれたのである。

本田圭佑 Keisuke Honda1986年6月13日生まれ、大阪府出身。'08年、名古屋グランパスからオランダに移籍、同年の南アW杯予選でAマッチデビュー。今年の本大会は2得点で16強入りの原動力となった。CSKAモスクワに所属。182cm、76kg

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