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世界一有名なサッカーの応援団長!?
スペインの“マノロおじさん”の素顔。 

text by

中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byMutsu Kawamori

posted2010/11/08 10:30

世界一有名なサッカーの応援団長!?スペインの“マノロおじさん”の素顔。<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

バルのオーナーでもあるマノロおじさん。自分の店は「メシを食うための金を稼げればそれでいい」とのこと

 本名マヌエル・カセーレス・アルテセロ。

 大きな太鼓を叩いてスペイン代表を応援することで世界的に有名な、あの“マノロおじさん”である。

 彼はバレンシアのホームスタジアム、メスタージャのすぐ隣にバルを構えている。今シーズンはバレンシア、レバンテ、エルクレス、ビジャレアルと、バレンシア近隣に本拠地を置く1部リーグのチームが4つもあることで、例年より店は繁盛しているという。マノロも、「おかげさまでこの不景気の最中、新しくアルバイトを2人も雇うことができたよ」と喜んでいた。

 試合がある日は大盛り上がりだ。

 W杯を現地観戦すること8回、それ以外の大会も含めて世界中を飛び回ってきた雄姿を収めた写真がたくさん飾られた店は、いつも活気にあふれている。

 マノロは客から「マノロ!」「エル・ボンボ(太鼓)!」と声を掛けられるたびに、笑顔で親指を立て、求められたすべての記念撮影に応じている。ただ、お腹の手術をしたこともあってあまり動くことができないため、最近はテーブルにまるで客のように座っている。

スペインサッカーのマスコット的存在となったマノロ。

 もはやスペインサッカーのマスコット的存在でもあるマノロだが、バレンシアやレバンテといったクラブの応援はしていない。

 どこか一つのクラブを応援できるような立場ではなくなってしまったこと、そして過激なサポーターがクラブの試合で増えている、というのがその理由である。クラブを応援できないというのは、代表を熱心に応援してきたことで得た知名度によってスポンサーがつくという“旨味”を大事にしているという実利的な側面もある。

 そんなマノロと親しくなることができた。

 きっかけは南アフリカW杯である。スペインサッカー連盟主催のプレスツアーにマノロも参加していて、いつも記者たちと一緒に移動していた。バスや飛行機で僕たちはほとんど隣同士だった。一人分の座席からはみ出してしまうほど大きな身体のマノロの隣に、マノロと同じく、いわゆるメタボなベテラン記者たちが座りにくかったからだ。

【次ページ】 南アW杯の冬のスタジアム。半袖で太鼓を叩き続け……。

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