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“ワンダー・ボーイ”の栄光と有終。
M・オーウェン、爽快なる引退劇。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2013/03/29 10:30

“ワンダー・ボーイ”の栄光と有終。M・オーウェン、爽快なる引退劇。<Number Web> photograph by AFLO

昨年9月に1年契約を結んだストークでは10番をつけた。1月のスウォンジー戦で挙げたゴールで、史上8人目となるリーグ通算150得点を達成した。

 3月19日、マイケル・オーウェンが、今季限りでの現役引退を発表した。

 ユースから育ったリバプールで、1軍デビューをゴールで飾ったのは16年前。当時17歳の「ワンダー・ボーイ」も、今や33歳のベテランとなり、「キャリアに幕を下ろす時が来た」と決心したのだった。

 オーウェンといえば、やはり、18歳にしてイングランド代表として出場した1998年W杯、アルゼンチン戦でのゴールが思い出される。世界に「オーウェン登場」を告げた独走ゴールには、「爽快」な魅力が集約されていた。

 デイビッド・ベッカムからパスを受けたのは、センターサークル内。ワンタッチでボールをドリブルの軌道に乗せると、一気の加速から1人目の敵を置き去りにし、トップスピードのまま簡単なフェイントで2人目をかわしてボックス内に侵入し、迷わずファーポスト側の上隅にシュートを決めた。

 オーウェンは、サッカー最大の醍醐味であるゴールを、単純明快に決めてみせるストライカーだった。だからこそ、国籍や敵味方の別を問わずに周囲を魅了したのだろう。パスを受ければ、一目散に相手ゴールを目指した。しかも、曲線を描くテクニカルなドリブルではなく、スピードで抜き去る直線的なドリブル。フィニッシュは、正確ではあっても、コースに流し込むのではなく、ネットに突き刺すようなシュートが定番だった。

全盛期からはほど遠い「失速」と「停滞」の引退表明。

 ペナルティエリア内でボールが来れば、より簡潔に、ボレーシュートを叩き込んだ。

「オーウェン・ファイナル」と呼ばれる、'01年FAカップ決勝アーセナル戦(2-1)での2ゴールも、「ミュンヘンの奇跡」として知られるドイツとの同年W杯予選(5-1)でのハットトリックも、ゴール前に走り抜けての力強いシュートと、ボックス内での咄嗟のボレーの組み合わせによる得点だ。

 それだけに、現役後半の「失速」と「停滞」に人々は胸を痛めた。誰もが記録更新を確実視した代表での得点数は、'07年に歴代4位の「40」となったまま。プレミアリーグ中位のストークで、スコアレスドローに終わった今季第30節をベンチで終えた直後という引退表明のタイミングには、尻窄みのエンディングを象徴するかのようで、淋しさを覚えずにいられなかった。

【次ページ】 レアルへの移籍がその後のキャリアに暗い影を落とした。

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