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たかが34分の1勝、されど大きい――。
浦和が開幕戦に乗せた“トッピング”。 

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阿部珠樹

阿部珠樹Tamaki Abe

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photograph byHiroshima Central Images

posted2013/03/06 10:30

たかが34分の1勝、されど大きい――。浦和が開幕戦に乗せた“トッピング”。<Number Web> photograph by Hiroshima Central Images

「ピッチの中で血を流してでも浦和レッズの勝利のために頑張っていきたい」と試合前に語っていたレッズの森脇良太は槙野智章、永田充との3バックで佐藤寿人をシュート1本に抑えた。

 プロ野球の開幕投手について取材したことがある。開幕投手の経験者や起用する側の監督の体験や考えを聞いて回った。そのときの感想はひと言でいうと「やや拍子抜け」。こちらは「エースとしての強い決意」だとか「シーズンの行方を左右する重み」といった話を期待していたのだが、当事者たちは開幕戦の勝敗には意外なほど淡白だった。最初に負けてもつぎに取り返せば十分で、シーズンの終わり頃には開幕のことなど忘れている。そんな感じだった。

 では全く気にかけていないかというと、そうでもない。シーズンが終わって総括するとき、開幕戦は、「あそこで勢いがついた」とか「負けて波に乗れなかった」と振り返るのに持って来いの材料なのだ。

 実質的な勝敗上の影響よりも、当事者たちが、そこになにを託し、なにを見出していくか。それが開幕戦の意味かもしれない。

両チームの浅からぬ因縁が開幕戦に深い意味を与えた。

 J1の浦和レッズとサンフレッチェ広島の開幕戦を見ながら、野球で取材した時のことが重なって見えた。

 勝っても負けても長いシーズンの最初の試合だ。負けても次に勝てば再スタートだし、勢いを云々するのも早すぎるだろう。だが、そこに自分たちで少々強引にでも意味を持たせたいのなら、簡単に譲ることはできない。

 試合を見た限り、この試合に「シーズンを占う重要な戦い」という意味を、大げさなほど持たせていたのはレッズのほうだったのではないか。

 このふたつのチームは昨年の開幕戦でも対戦している。昨年の開幕はサンフレッチェの短いパスをつなぐ戦術に翻弄され、レッズは0対1で敗れた。借りを返したい気持ちは強かった。

 一方のサンフレッチェには貸しがあった。

 とにかくレッズにはサンフレッチェ出身者が多い。監督のミハイロ・ペトロビッチにしてからがサンフレッチェの前監督である。自ら「広島は自分が育てた」と公言している。その監督に痛い目にあわされれば、やはりおだやかではないだろう。

【次ページ】 広島のお株を奪うゲーム運びで浦和が痛快に逃げ切る。

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