SCORE CARDBACK NUMBER

4部降格レンジャーズに
ファンが示した愛と忠誠。
~“茨の道”初戦に集った5万人~ 

text by

豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

PROFILE

photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2012/09/09 08:00

多くのファンの前で5-1で勝利。客席には「RANGERS FOREVER」の文字が掲げられた。

多くのファンの前で5-1で勝利。客席には「RANGERS FOREVER」の文字が掲げられた。

 晩夏のスコットランドで、ある奇妙な現象が起きた。

 同国4部リーグの試合に、約5万人もの観客が集まったのである。その日の英国でこの入場者数を上回ったのは、イングランド・プレミアリーグのアーセナル対サンダーランド、ニューカッスル対トッテナムの試合のみだった。

 大歓声の中で繰り広げられたその試合は、レンジャーズ対イースト・スターリングシャー。クラブの経営破綻により、今季から4部で再出発することになったレンジャーズのホーム初戦だ。

 4部降格が決定した直後は、観客減や選手の大量流出など悲観論ばかりが流れた。しかし、ふたを開けてみると、これまでと変わらぬ観客がホームのアイブロックスを埋め、熱い声援をチームに送った。レンジャーズのマッコイスト監督は「信じられない。これほどのサポーターが集まってくれるとは。この声援がある限り、我々は前進し続ける」と感極まっていた。

 サポーターがチームを見捨てなかったことで、漂う悲観論はひとまず落ち着いたが、それでもシーズンを通してこの観客数を維持することは不可能だろう。

 この試合はホーム初戦という注目もあったが、観戦環境が厳しくなる冬場には、入場者数の低下は避けられない。

対戦相手は建具屋に運送屋……モチベーション維持が一番の問題。

 サポーターや選手のモチベーションも試される。

 輝かしい歴史を歩んできたレンジャーズが4部リーグで戦うのは初めてのことだ。4部のクラブはほとんどがセミプロの選手で構成されており、この日対戦したイースト・スターリングシャーの選手の中にはレンガ工や建具屋、運送屋などがいた。ヘイとハンターの2選手などは、「夏のバカンス中」という理由により欠場したくらいだ。

 中心選手の多くが残留するなど、戦力的にレンジャーズの優勝は確実視されており、そこには毎年セルティックと熾烈な優勝争いを繰り広げてきた興奮はない。

 グリーンGMは「あなた方はこのクラブに対し、情熱と忠誠を示してくれた。必要なのはそれなのです」と訴えかけた。今のレンジャーズに最も必要なのはお金ではなく、退屈な4部という現実をも受け入れる、サポーターの大きなクラブ愛なのだろう。

関連コラム

ページトップ