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入江陵介、ロクテ破るも金に届かず。
悔しさの中に見た世代交代への意思。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byKaoru Watanabe/JMPA

posted2012/08/03 12:05

入江陵介、ロクテ破るも金に届かず。悔しさの中に見た世代交代への意思。<Number Web> photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

宿敵ロクテ(写真中央)を破り銀メダルに輝くも、クラリー(写真左)に一歩及ばなかった入江。新たなライバル出現に4年後、リオ五輪での雪辱を期す。

 傾斜のきついアクアティクス・センターのスタンドは、高い位置の席からでも、レース全体を見渡せる。連日、スタンドには地元ロンドンの人々を始め、各国からの客が色とりどりの国旗を振っている。観客の歓声はむろんのこと、出場しない選手たちが応援にまわり、場内は多くの声援が飛び交う。

 華やかさを感じさせるプールから上がった入江陵介は、悔しそうだった。

 8月2日、競泳男子背泳ぎ200mで、銀メダルを獲得した。100mの銅メダルに続く、2個めのメダルである。

 にもかかわらず、心底悔しそうだった。

 100mのときは、メダルを手にした喜びを露わにしていた。

「ずっとメダルを獲りたいと思っていましたので、本当にうれしいです。3位と分かったとき、すごくうれしかったです」

 今回は対照的だった。

 それだけ、200mに懸ける思いが強かった。

プラン通りの泳ぎを見せ、残り30mでは3者がほぼ横一線に。

 もともと、後半の追い上げを持ち味としていた入江は、前半の泳ぎを課題として、取り組んできた。昨年の世界選手権の200mで、ライアン・ロクテ(アメリカ)に前半から置いていかれての銀メダルが、涙を流すほど悔しかったからだ。

 以来、打倒ロクテを掲げてきた。そして課題にしてきたのが、前半でいかにロクテについていけるかということにあった。その上で、最後に勝負をかけようと考えていた。だから5月のジャパンオープンなどで、前半から行く泳ぎを試行してきた。

 迎えた200m決勝。6コースの入江は、スタートから、プランのとおり積極的な泳ぎを見せる。50mを27秒17の2位でターン。100mでは55秒85。隣を泳ぐ5コースのロクテがトップだが、その差は0秒22。昨年とは違い、ぴたりとついていく。

 ここから、4コースのタイラー・クレアリー(アメリカ)が伸びてくる。150mではトップはロクテのまま、2位にクレアリーが上がり、入江は3位。

 ここからが勝負だった。3者の激しい争いが続く。残り30mではほぼ横一線に並ぶ。

 その中から、クレアリーがわずかに抜け出したように見えた。

 ゴール……。

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