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怪我からの再起で見せた、
王者・国枝慎吾の凄み。
~車いすテニス、パラ五輪連覇を~ 

text by

秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

PROFILE

photograph byHiromasa Mano

posted2012/07/02 06:00

怪我からの再起で見せた、王者・国枝慎吾の凄み。~車いすテニス、パラ五輪連覇を~<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

元世界ランク1位の国枝は、2年ぶり5度目の全仏制覇を狙ったがフルセットで惜敗した。

「今だから言えますが」と国枝慎吾は書いている。この2月、ブログで右ひじの手術を公表し、「実はこの2年間ずっと肘が痛いなりにプレーしていた」と打ち明けたのだ。

 '09年9月、国枝は全米オープンを制したが、右ひじを痛め、シーズン終盤戦を棒に振った。翌'10年初頭に復帰、シングルス100連勝も達成したが、これも痛みと闘いながらの偉業だったのだ。

 昨シーズンの後半、国枝は再びひじ痛でツアーを離れた。2年前と同じ全豪での復帰を目指したが、今度は間に合わなかった。今年9月にはロンドンパラリンピックが控えている。治療もいろいろ試したが、完治には遠く、悩んだ末に関節鏡を使った手術に踏み切った。

 手術から2カ月後には早くもボールを打ち始めた。復帰戦は5月のジャパンオープンだった。担当医は「少し早い」と心配したが、ここで復帰しなければパラリンピックに万全の状態で臨めない。「勝負をかけなくてはいけない」と見切り発車を決めたのだ。

手術後のブランクが影響して逆転負け。全仏決勝を糧に。

 復帰3戦目の全仏は準優勝だった。決勝の最終セット、7ポイント先取のタイブレークは5-1と先行したが、逆転で敗れた。北京パラリンピックの金メダリストとして車いすテニス界に君臨した国枝らしからぬ、詰めの甘さだった。それでも試合後の彼は冷静だった。

「詰め切れないのは、まだやらなきゃいけないことがあるということ」

 逆転負けを悔やむでもなく、現状に焦るでもなく、冷徹に自分を見つめているところが、修羅場を何度もくぐり抜けてきた国枝の凄みだ。勝負どころを取りきれないのはブランクの影響だろう。勝負勘を取り戻し、技術面の精度を上げていけば十分いける、そんな手応えもあったに違いない。

 結果が伴わなくても焦りがないのは、リハビリ中に1日6~7時間のトレーニングをこなした自負があるからだ。

「ただではコートに戻りたくなかったので、ボールを打てない分、体を鍛えた。体の強さは過去にないくらいのレベル。あとはプレーの感覚が戻れば。一歩ずつ進んでいると思う」

 国枝の言葉は力強かった。車いすテニス界の王者は、ロンドンに向けて確かな一歩を踏み出した。

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