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モロゾフが再び高橋大輔の元に――。
衝撃のチーム再結成の真相とは?  

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2012/06/18 12:00

モロゾフが再び高橋大輔の元に――。衝撃のチーム再結成の真相とは? <Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2007年の世界選手権では、モロゾフ・コーチ(右)のもと、日本人男子史上最高位となる銀メダルを獲得した高橋大輔。モロゾフと再びタッグを組み、ソチで初の五輪金メダルを目指す。

以前とは違い、依存のないモロゾフとの新しい関係。

 高橋も、それに同意した。

「シーズンを終えてから、ゆっくり考えてみました。ニコライのことは、コーチ、振付師として尊敬する気持ちはずっとあった。実は毎年、プログラムの振付師を決めるとき、いつも候補に名前は上がっていた。こちらからまたお願いすることはあるかもしれないとは思っていたんです」

 周囲は高橋に気遣って彼の前でモロゾフの名前を出すことすら避けてきたが、本人の中ではそれほどでもなかったのだという。

「ロシアというのはかなり特殊な環境。ソチ五輪に向けて、アジア人だけのチームで挑むよりも、ロシア人に参加してもらうことは様々な面で助けになるだろうと思いました」

 また同時に、それまでずっと長光歌子コーチと築いてきた安定したトレーニング環境に、モロゾフならあと一押しのスパイスを与えてくれるだろうと思ったという。

「彼はもともと、選手のモチベーションを上げてくれるのがすごくうまいコーチ。この数年間の成長を経て、お互いがそれぞれの期待に応えられるかどうかは、やってみないとわからない。彼との新しい勝負、という気持ちもあります」

 だが今度の関係は、以前のように彼に依存するような形にはしない、と高橋は断言した。長光コーチがこれまでのように主任コーチを務め、モロゾフにはあくまでもアドバイザー的な立場で来てもらうという。

唯一の懸念は、モロゾフに対する最近のジャッジの評価。

 お互い五輪の金を狙うという共通の目的のため、再結成を決意した高橋とモロゾフ。

 だが一つだけ懸念が残っていた。それは、モロゾフに対する最近のISUジャッジたちの評価である。

 かつては飛ぶ鳥も落とす勢いだったモロゾフだが、このところ彼の作るプログラムは点が伸びていない。それは、今の採点方式が重要視する「トランジション」(技と技の合間のつなぎ)に欠けているためだと言われてきた。

 一方、この「トランジション」にかけて右に出るものはいないと言われているのが、ローリー・ニコルというカナダ在住のアメリカ人振付師である。エヴァン・ライサチェックをバンクーバー五輪金へと導き、現世界チャンピオンのパトリック・チャン、カロリナ・コストナーとも、ニコルが長年手塩にかけて振付を指導してきた選手だった。すでに'90年代からスター振付師と言われてきた実力者だが、彼女の時代は息が長く、まだ当分終わりそうにない。

【次ページ】 今季のプログラム制作は白紙に……。

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