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ダイレクトプレーって何?
言葉の“誤用”にご用心。
~サッカー界の造語がはらむ危険性~ 

text by

浅田真樹

浅田真樹Masaki Asada

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posted2012/06/06 06:02

ダイレクトプレーって何?言葉の“誤用”にご用心。~サッカー界の造語がはらむ危険性~<Number Web> photograph by AFLO

日本屈指の「ダイレクトプレー」の名手、中村憲剛。自陣からでも常に裏への意識を持つ。

 最近、テレビのスポーツニュースなどで頻繁に出くわし、気になっていることがある。例えば、こんな具合だ。

「前半はホームの仙台が、ダイレクトプレーでチャンスを作りました」

 そんなナレーションとともに映し出されるのは、複数のワンタッチパスが連続でつながるシーン。つまり、そこでは「ダイレクトでパスがつながること」をダイレクトプレーとしているわけだ。

 ダイレクトプレーという言葉が一般に広まったのは、日本が初出場した、'98年ワールドカップ・フランス大会がきっかけだった。大会後、日本サッカー協会のテクニカルスタディグループが大会を総括・分析し、そのなかで「ダイレクトプレーの重要性」を指摘したのである。

'98年当時の“ダイレクトプレー”は今と意味が違った!?

 当時のテクニカルレポートでは、ダイレクトプレーをこう説明している。

〈常にゴールを意識して、シンプルに相手の守備ラインを崩し、ゴールに結び付けるプレーまたは、相手の一瞬の隙をつくようなプレー(後略。原文のまま)〉

 J1第9節の川崎対磐田戦で、中村憲剛が矢島卓郎のゴールをお膳立てしたスルーパスなどは、まさにダイレクトプレーのお手本だった。中村は自陣でボールを持ちながらも磐田の油断を見逃さず、一発でゴールへ直結するパスを、DFラインの背後に通している。

 ポゼッション全盛の時代においても、ダイレクトプレーは必要不可欠。その意識は、点を取るためには失ってはいけないものなのだと、再認識させられた。

出どころの曖昧な造語が少なくない“サッカー用語”の危険性。

 さて、冒頭の話題に戻ろう。

 正直、サッカー界で一般に使われている言葉のなかには、出どころの曖昧な造語の類が少なくない。だから、ワンタッチパスの連続をダイレクトプレーと表現することを、一概に否定はできない。

 ただ心配なのは、取材者と被取材者との間に齟齬が生じる危険性があることだ。もし試合後に、ある選手が「もう少しダイレクトプレーを使えばよかった」と話したとする。これをどちらの意味で解釈するかによって、話はまったく違うものになってしまう。

 人と人とのコミュニケーションにおいて、常に誤解は生じうる。だが、メディアの勉強不足で、選手や監督の意思が伝わらなかったとしたら。それは、絶対に避けなければいけないことである。

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