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再びの八百長問題でセリエAに激震。
ユーロにも大打撃で今後の展開は? 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2012/06/06 10:30

再びの八百長問題でセリエAに激震。ユーロにも大打撃で今後の展開は?<Number Web> photograph by Getty Images

ユーロ2012まであと1週間の6月1日、スイスのチューリッヒでロシアと対戦したイタリアは、ミスを多発し、0-3で惨敗した。八百長問題は、10日に行なわれるユーログループリーグ初戦のスペインとの一戦にも影響する恐れがある。

 八百長が国技ではないのか。

 ユーロ2012に臨むイタリアは、そんな世の謗りを免れまい。

 衝撃を与えた元イタリア代表FWジュゼッペ・シニョーリの逮捕から1年、イタリア各地の地方検察によって進められてきた国際違法賭博事件の捜査は大詰めを迎えている。

 3度目の大量逮捕劇となった5月28日、八百長工作への関与容疑でラツィオの副主将ステファノ・マウリら19人が手錠をかけられ、ユーロ直前合宿中だったイタリア代表DFドメニコ・クリシートは事情聴取のためにナショナル・トレセンから連行された。さらに、ユベントスで無敗優勝を遂げたばかりのアントニオ・コンテ監督もシエナ時代の容疑で家宅捜索を受けた。ステファノ・パラッツィ高等検事率いる検察団は八百長関与の起訴容疑を固めると、昨季セリエAに参戦した3クラブ(アタランタ、ノバーラ、シエナ)を含む合計22クラブと、52人の選手たちへそれぞれ罰則処分を求刑するに至った。

 代表MFダニエレ・デロッシは「今回は選手が直接携わっている。(クラブ上層部が仕組んだ)2006年のカルチョ・スキャンダルより性質が悪い」と吐き捨て、就任以来選手たちのモラル向上を訴え続けてきた代表監督プランデッリが受けたショックも大きかった。衆目の届かない下部カテゴリーではなく、1部リーグにまで病巣の根が深く張っていたことに国民の多くが声を失う中、首相モンティは緊急声明で憤怒を露にした。

「この国の全てのサッカーを2~3年止めることも考えるべきではないか」

 イタリアは震撼し、アッズーリは大きく動揺している。魑魅魍魎が暗躍するセリエAの価値観が問われている。

ネット賭博の普及でセリエの八百長も国境を越える。

 有名な“トトカルチョ”に代表されるように、イタリアでは国から認可を受けた合法賭博が昔から盛んだった。長引く不景気や緊縮財政の世情に反して、近年も市場は成長の一途を辿る。その規模は年間4000億円に達するといわれ、現在隆盛を誇るのはインターネットを経由したオンライン・ベッティングだ。国境を問わないオンライン・ベッティングは国際違法行為の温床にもなりやすい。

 一連の捜査で逮捕された52人もの容疑者たちの自白により、国際犯罪シンジケートによって仕組まれた21世紀スタンダードともいえる八百長の実態が明らかになりつつある。

 例を挙げると、2010-2011年シーズンのセリエA最終節、レッチェ対ラツィオの八百長を仕組んだのは、「タン・シート・エン」と名乗るシンガポール・マフィアの大ボスだった。

 タンは2つのアジア系賭博サイトで、同カードの“2チーム合計5ゴール以上”という高配当の目に合計2億円以上を賭けた。配下のハンガリー人組織が実行部隊となり、選手たちへの買収工作のため現金60万ユーロ(約6000万円)を違法にイタリアに持ち込むと、現役や元選手を仲介役として使って、ばら撒いた。試合は結局4対2でラツィオが勝っている。

【次ページ】 麻薬売買より儲かるサッカー賭博にマフィアが本格参入。

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