野ボール横丁BACK NUMBER
野球の華はショートかピッチャーか?
日本人野手の評価がMLBで低い理由。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2012/01/18 10:30
ニューヨーク・ヤンキースにデレク・ジーターの控え遊撃手として移籍する可能性もあった西武・中島裕之。来年改めてFAでメジャーに挑戦するという意向を発表している
ダルビッシュも田中将も高校時代はすごい打者だった!?
もちろん、監督の意向だけではない。
ダルビッシュ有も、田中将大も、高校時代、すごいバッティングをしていた。そもそも打球の質が違うのだ。
彼らが本気で打撃に取り組み、野手としてプロ野球の世界に入っていたら、どれほどの打者になっていたことだろう。
ただ、残念ながら、彼らは高校時代からさほど打者への執着心がなかった。しかし、それも「投手が野球の華」という日本の野球文化の中で育ったからだろう。
その点、松坂は高校時代から、投手と同等かそれ以上に打撃が好きだった。彼が入団時、セ・リーグにこだわっていたのは、打席にも入れるからだ。そのためドラフト会議で交渉球団が西武に決まったとき、松坂は本気で進学か就職を考えたという。
そんな松坂だっただけに、アメリカ人が言う通り、なおさら「3番ショート」の松坂を見てみたかった気はする。
「まずはショートから」という高校野球の監督が現れたら……。
ときおり日本のプロ野球で投手が打撃練習をしている光景を目にすることがあるが、何より驚かされるのは、その打球の角度であり、飛距離だ。
今でもよく覚えているのは、当時、横浜のダブルストッパーとして売り出していた佐々木主浩と盛田幸妃が、遊びでホームラン数を競っていたときのことだ。
2人は、まるでいつもよりフェンスが20メートルぐらい前にきているのではないかと錯覚したくなるほど、軽々とバックスクリーンに放り込むのだ。彼らがあれだけのボールを投げられる理由が一瞬にしてわかった。
そう、日本にも人材はいるのだ。そういう人材が野手になれば、日本でもメジャーで通用する打者は育つはずだ。だが、それが日本の野球文化なのだろう、優秀な人材ほど投手に流れる。
高校野球の監督で「私はまずはショートから決める」という監督でも現れるようにならない限り、現状は変わらないのではないか。