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日本ハムが繰り返す“負の歴史”。
梨田監督退任報道で考えたこと。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/09/07 12:20

日本ハムが繰り返す“負の歴史”。梨田監督退任報道で考えたこと。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

今季、ソフトバンクと共に“2強独走”態勢を築いてきた日本ハムだが、梨田監督の退任報道後に失速し、9月6日には今季ワーストタイの5連敗。ダルビッシュでも負の流れを止めることはできなかった

 8月27日、一部スポーツ紙の報道を目の当たりにした日本ハムファンの多くは、己の目を疑ったのではないだろうか。

 梨田監督退任――。

 シーズン途中の監督退任(解任)報道は、さして物珍しいことではない。梨田昌孝監督自身、今年が2年契約の最終年でもあるため、フロントが水面下で続投の可否を議論している状況であることも理解できる。しかし、チームの現状を鑑みれば、そのタイミングがベストではないことは自明の理。

 日本ハムは今、ソフトバンクと首位争いを繰り広げている。その最中において、チームの絶対的な求心力である指揮官の去就が囁かれて選手たちのモチベーションが高まるはずもない。現時点で、監督本人はもとより、フロントや選手は明言を避けてはいるが、報道された27日以降、チームは5連敗を含む3勝7敗。ソフトバンクに6ゲームと差を広げられ(9月6日時点)、それまでの勢いを失いつつある。突然の監督退任報道は、結果として悪影響を及ぼしていると思わざるを得ない。

 そして、こうも邪推してしまう。結局は、'07年の教訓は生かされていなかったのだろうか、と。

ヒルマン監督時代も退任報道によって失われた「チームの一体感」。

 当時の指揮官だったヒルマン監督は、前年度にチームを44年ぶりの日本一に導きながら、この年、カンザスシティ・ロイヤルズの監督就任が決定したことによりシーズン終盤に辞任を表明。事前に説明を受けていなかった選手たちの士気は下がり、2年連続でリーグ制覇は成し遂げたものの日本シリーズでは中日に完敗した。選手から信頼されていた監督ではあるが、関係者の話によればこの報道で「チームの一体感は薄れていった」という。

 それだけ、指揮官の去就問題は現場の人間たちにとってはセンシティブである、ということだ。

 だからこそ、ますますこのタイミングでの退任報道が不可解でならないし、報道が事実であるとすれば、梨田監督を代えるフロントの意向にも疑問符が残る。

 チームに生じる倦怠感を回避するために定期的な新陳代謝を求めるのは分かる。しかし、彼は昨年まで確かな実績を残してきた。就任1年目は3位。2年目はリーグ制覇。3年目も4位ながら終盤までクライマックス・シリーズ争いを演じた。

【次ページ】 最大の功績は機動力を駆使したヒルマン野球の継承。

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