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真弓監督が取り組む“微妙な変革”。
~「ダメ虎」にはまだ早い!~ 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byToshiya Kondo

posted2009/06/09 06:03

真弓監督が取り組む“微妙な変革”。~「ダメ虎」にはまだ早い!~<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

 この時期にきての新外国人獲得に果たしてどのような意味があるのだろう。5位と低迷する阪神は、新外国人ブラゼルを獲得。現時点ではチームの起爆剤となっているが、彼の登場が意味するものは何か。

「チームに予想外のことが起きたということでしょう。危機的な状態。けがとかで思いどおりに行かない時もあるけど、この時期で新外国人を獲得するのはシーズン前に立てたものから予定外のことが起きているということ」

 横浜や中日でヘッドコーチなどを務めた評論家の福田功氏はそう語った。

急場しのぎのブラゼル加入は「ダメ虎」復活の証か!?

 50試合を終えた時点で21勝26敗、借金は5。「ダメ虎に戻ったんちゃうか」という嘆きの声が聞こえてきそうな今年の阪神である。福田氏が言うように、この時期での新外国人獲得は戦い方の変更を余儀なくされている急場しのぎの感は否めない。

 しかし、かといって今の阪神がすべてのことで悪い方に向かっているかというと、そうは思えない。前監督の方針から少しの変化をみせたことが比較され、メディアの批判にさらされてきた真弓新監督だが、その采配が新しい方向への変革を示していることも、また事実である。

先発完投を重視する真弓監督の真意が浸透してきた。

「情けないです」

 5月14日の広島戦で1失点完投にもかかわらず、浮かない表情でお立ち台にいたのはエース・安藤。完封をあと一歩のところで逃した自らのピッチングを卑下し、快勝に盛り上がる甲子園球場を一転暗い空気に変えた。

 この意識こそが、今年の阪神に芽生えた変革なのではないか?

 50試合を終えた時点で、先発投手が完投勝利を挙げたのは昨年の同時期から1増の4試合を数える。うち完封が3試合だ。微増にすぎないと見えるが、勝利数からすれば上積みされた数字といっていい。先発投手が任されたイニングも、昨年より上回っている。

 もっとも、絶対的クローザー・藤川球児の離脱が少なからずの影響を与えていることも否定はできないが、シーズンが開幕して先発投手が二回り目に回ったころから、真弓監督は、とにかく、先発投手を我慢強く引っ張り続けてきた。

 能見が4月24日の広島戦で、今シーズンのチーム初完封を果たしたが、その伏線にあったのはその前2試合で6イニング以上を投げていることだ。負けていても勝っていても、ゲームを作れている投手は替えない。先発投手の調子が良くとも悪くとも、藤川の存在をちらつかせてきた前監督の采配とは違う。福原にとってもしかり。4月25日の広島戦では12得点を奪っての快勝だったが、真弓監督は8回まで福原をマウンドに立たせ続けた。その結果として、福原は6月6日のオリックス戦で完封勝利を挙げている。先発陣のクローザーたちへの依存がなくなり、責任感が強くなってきた何よりの証拠なのだ。安藤の「情けないです」発言は、そのことを象徴している。

【次ページ】 守護神・藤川依存からの脱却が阪神浮上の鍵だ。

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