プロ野球はもっとカッコよく、ダンディであるべきだ。そんなふうに最近、強く思うようになった。
今、求められているのは、効率の良い野球でもなければ、楽しく面白い野球でもない。誇り高く、美学を貫く野球だ。
林昌勇(ヤクルト) 23試合登板、自責点0、防御率0.00
武田久(日本ハム) 20試合登板、自責点0、防御率0.00
開幕以来、完璧なピッチングを続けているストッパーが、両リーグにいる。右のサイドハンドからMAX160kmの、うねるような軌道の「蛇直球」を投げ込む林昌勇(イム・チャンヨン)と、公称170cmの小柄な身長を躍動させて、低いリリースポイントから投じる「滑空ストレート」が持ち味の武田久。シーズンが始まって2カ月以上経過した今の時期に、防御率0点は恐れ入る。
幻に終わった“ミスターゼロ”同士の決闘。
6月8日のヤクルト-日本ハム戦は、このふたりの“ミスターゼロ”の投げ合いが見られるのではないか、という試合展開になった。
8回を終わって3対3の同点。9回表、日本ハムの攻撃に、ヤクルトベンチは林昌勇をマウンドへ送る。同点の場面でのストッパーの投入だ。
「もしここで林昌勇が抑え、その裏に武田久が出てくれば、同点のまま、防御率0点ストッパーの投げ合いが実現するぞ。無傷のふたり、どちらかのゼロ記録が止まるまで終わらない!」
私はそんなシナリオを勝手に思い描き、ひとりで興奮していた。23戦無敗のテコンドーの使い手と、20戦無敗の北の空手家の対決はいったいどちらに軍配が上がるのか。いや、これはちょっと例えが違うか。
そして、ふと十年以上前のある試合を思い出していた。もう正確な日付も記録もわからない。ヤクルトの高津臣吾と横浜の佐々木主浩、当時両チームの守護神だったふたりの名投手が、延長まで3~4イニング投げ合った試合である。
「高津臣吾vs.佐々木主浩」の再現を期待したのだが……。
近年のプロ野球では、ストッパーはリードした場面に出てくるのがお決まりで、同点での登板は多くない。そのため両チームのストッパーが同点でぶつかり、延長戦を何イニングも投げ合うなどという場面にはめったにお目にかかれなくなった。林昌勇と武田久、セ・リーグとパ・リーグの防御率0点ストッパーの「ゼロの継続をかけた投げ合い」は、あの高津vs佐々木の対決に並ぶクラスのイベントに思えた。
ところが、希望のシナリオは実現しなかった。9回裏、日本ハムのマウンドに上がったのは武田久ではなく、中継ぎの建山義紀だったからだ。
この継投自体は、特別なものではないし、ことさら取り上げるべき采配ではないのかも知れない。建山は日本ハムの立派な中継ぎエースだ。延長を想定すれば、中継ぎをはさむのは自然な継投であり、同点であえて抑え投手を注ぎ込む必要はない。このゲームは、交流戦のほんの1試合なのだ。
<次ページに続く>
筆者プロフィール
田端到
1962年、新潟県生まれ。コラムニスト。競馬、野球の分野を中心に活躍し、著書に監督采配をデータから論じた「図解プロ野球 新・勝利の方程式」、「パーフェクト種牡馬辞典」など多数。ヤクルトスワローズ愛好家でもある。

































