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繊細にして強靭なレフティーFW出現。
柏レイソルの『41番』は誰だ! 

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木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byMasahiro Ura

posted2009/09/02 11:30

繊細にして強靭なレフティーFW出現。柏レイソルの『41番』は誰だ!<Number Web> photograph by Masahiro Ura

第22節の横浜Fマリノス戦に先発でJデビューした田中順也。今後は大学リーグと掛け持ちの予定

 左サイドから上がった1本のクロスに、鳥肌が立った。

 Jリーグ22節、浦和レッズ対柏レイソルの前半ロスタイム――。『41番』の左足から放たれたボールは、まるで翼でもついているかのようにDF平川忠亮が伸ばした左足をフワリとかわし、ワンバウンドしてポポの足元へ。ポポがシュートをダフらなければ、ダイジェスト番組で何度もスロー再生されたであろう決定的なシーンだった。

 この41番は誰なのかと気になり、手元のメンバー票を見てみると、『FW田中順也・順天堂大学在学中』と書かれている。この夏に特別指定選手として登録され、ほんの4日前にJリーグにデビューしたばかりのホヤホヤの新人だった。

 後半16分、さらにこの大学4年生が魅せる。スローインを受けると、すぐさま反転してDFをかわし、ポポの足元にドンピシャのパス(惜しくもシュートは枠外)。実は田中は先制点にも絡んでおり、前半23分、田中→ポポ→大津祐樹と三角形を描くようにパスがまわりゴールが決まった。

大学の夏休みを利用してJリーガーに。

 いったい田中順也とはどんな選手なのか?

 柏の竹本一彦GMは言う。

「田中は夏休みを利用して、特別指定選手として登録することになった。そうしたら、新監督のネルシーニョが気に入ってね(笑)。日本人監督だったら、残留がかかっている厳しい時期に、こんな大胆な起用はできなかったでしょう。パスを出せるし、テクニックがあるし、何と言っても得点力がある。ネルシーニョが気に入ったのも、紅白戦でガンガン点を取ったからなんです」

 タッチが柔らかいレフティーというと、競り合いに弱いイメージがあるが、田中はそういうタイプではない。

「フィジカルが強く、ポストプレーもできるんですよ。加えて頭の回転が速く、浦和戦のハーフタイムには、監督に『ボランチとセンターバックのマークをどうすればいいか?』と質問していた。体が強くて、頭もいい。だからポポだろうが、フランサだろうが、誰とでもFWを組めるんです」

 つい最近まで、これほどのタレントが関東大学リーグ2部に埋もれていたのが不思議なくらいだ。流通経済大学の大平正軌コーチが「大学で生きるタイプと、Jリーグで生きるタイプは違うんですよ」と言うように、高いレベルに入ったことで才能が引き出されたのかもしれない。

【次ページ】 埋もれた才能を発掘したネルシーニョ監督の眼力。

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